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「その、A、」
おずおずとリドルさんが口を開く。あんなに怒っていたのに、こうやって抱きついたくらいでころころ感情を揺らして、揺らして、…可哀想だと思った。
「ねえ、リドルさん」
彼の華奢だけど硬い胴に回した腕をさらにぎゅうと締め上げる。彼が逃げないように。私がこれから聞くことをはぐらかされては困ると思ったのだ。
「A、ねえちょっと、近」
「魔法をかけたのはあなたですか？」
ひゅっと小さく息を吸う音が聞こえ、しかしそれ以上にリドル・ローズハートは動揺した様子を見せなかった。私のシャツと、彼のブレザーとベストとそしてシャツが、ふたりの間にわずな距離を作っていたけれど、それでも彼の心音ははっきりと皮膚で感じた。感じたけれど、それも少しだけ早くなったくらいで早鐘を打つなんてことは無かった。
「…キミにバレるんだろうってことは、ボクも当然分かっていたよ。分かっていたさ、勿論。ボクは実践魔法が得意なんだから」
「そうですか」
だだっ広い保健室で狭く抱き合うもんだから、互いの上がった体温だとか吐く息だとか私だけうるさい心臓の音だとか、なんだかとても暑かった。
「それでもね、キミがボクに嫌悪を持つのと、かけた魔法がバレて怖がられるのだったら、ボクは何故か後者の方がマシだと思ったんだ。まあ全てボクの自業自得なところが笑えないのだけどね。」
「たった少しの間だけでもいいから、幸せに微笑みかけて欲しかった」
「キミが倒れた時、本当はボクも一緒に倒れてしまいたいくらい怖かったんだ、心做しか朝から顔色も悪かったし、心配で心配で、でも授業をサボる勇気なんてボクには無くて、情けない気持ちでいっぱいになりながら一番にかけてきたのにキミはデュースと、幸せそうに、」
そう言葉を吐き出す彼は本当に心配していたようだった。何故だろう。私はてっきり
「貴方の魔法が私の倒れた原因だと、思っていました」
そう零すと彼は、抱きついて互いの肩にあった顔をぐいと突き合わせるように持ってきて、その近さに狼狽えることもせずに弁解をした。
「そんなはずないだろう！だってボクがかけたのは沢山の感情の分岐の分岐をいじる程度の軽いもので、いくら魔力がないといえど負担なんてかからないはずで、キミの体調にも何も起こらないように魔力を微量に調節して、慎重に計画したものなのに」
「なのに、なんで倒れたのか分からなくて、怖くて…」
リドルさんの顔は、本当に怖いという顔だった。
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らぱ(プロフ) - オパールさん» ほんとに刺さってるみたいで良かったです〜！ありがとう！ (11月12日 21時) (
レス) id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
オパール - あああ！性癖にぐっさり！刺さりました！ (11月10日 18時) (レス) @page40 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
らぱ(新)(プロフ) - 青藍さん» ありがとうございます🤤嬉しすぎて溶けそう🤤伝わりましたよ、好きになってくれてありがとう🥳🥳🥳 (2022年5月24日 16時) (レス) id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
青藍(プロフ) - うわぁ、ものすごい作者様を見つけてしまった……どこか大切なところが欠けてるような、ずれてるような、そんな感じで、どこか不気味で不安定な感じにどきどきして、歪んでどろどろした、そんな感覚がとても好きです、上手く伝えられなくてすみません、応援してます。 (2022年5月24日 13時) (レス) @page40 id: 2e61a566e8 (このIDを非表示/違反報告)
らぱ(新)(プロフ) - 愛涙さん» わわわ私を喜ばせる天才ですか！言って欲しいこと全部言ってくれて嬉しすぎる！✨ありがとう私も大好きだ！！！ (2022年1月14日 21時) (レス) id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らぱ | 作成日時：2021年12月3日 22時
