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それから2週間ほど経った頃、
イザナと鶴蝶が集会までの時間潰しに街を歩いていると、
見覚えのあるギャルたちが、公園に集まっていた。



気になって、それとなく目をやれば、
明らかに毛色の違う少女と対峙していた。



「アンタが蘭の女?」



「どちら様?」とユリが答えた次の瞬間、
ギャルたちは容赦なく水をかけた。



「アンタみたいなつまんない女、
 蘭も珍しかっただけでしょ?」
「お嬢様面してやることヤ ってるくせに」
「もしかしてもう泣いちゃった?」



大声で下品に笑いこけるギャルたちに、
少女はどうするのだろうと思って見ていると、
濡れた髪をかきあげながら、ユリは笑顔で言った。



だが、薄紫の瞳の奥は笑っていない。



「こんなことしたって、
 私は何も傷つかないわよ。

 それに…
 蘭ちゃんに殺されても知らないわよ」



ユリの凍りついた笑顔は、
キレた時の蘭に似て、恐ろしく美しかった。



ギャルの内の1人が、ユリに掴みかがろうとした次の瞬間、
その女は何者かに殴られて気を失っていた。



「いいもん見せてもらったワ…
 俺、イザナ。天竺の総長だけど」



色は違えど、見覚えのある特攻服に、
ユリはこれが蘭の言っていた王かと思った。



「蘭のところ行くんだろ?
 送っていってやるよ」



いつもなら断るところだが、
一刻も早く着替えたかったし、
相手が王なら蘭も何も言わないだろうと、
ユリはご迷惑でなければ…と答えた。



「お前は先に集会行ってろ」
と鶴蝶に言いつけて、イザナはバイクを発進させた。



ユリは遠慮がちに、イザナの背につかまった。



「よくあんの?あぁいうこと」
「たまに…」
「アンタのその制服、
 頭良い、金持ちが行く学校だろ?」
「まぁ…」
「なんで蘭と付き合ってんの?」
「…好きだから」
「へぇ…
 あいつ、人殺しだぜ?」
「…だから?」
「へぇ…」



15分ほど走ると、六本木に着いた。



「ありがとうございました」
「つかアンタ、本当に幸せ?」
「…幸せの形って、人それぞれだから」
「ふぅん…」
「私は蘭ちゃんと竜ちゃんのこと、
 血の繋がった家族と同じくらい大切なの。

 他の人にどう思われても」



2人のこと、よろしくお願いしますね、
と、ユリはイザナを見送った。

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作者名:あたそ | 作成日時:2023年3月20日 23時

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