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家へ帰ると、ユリはいつも通りの笑顔で待っていた。
「おかえり」
「今晩もしかしてカレー?すげぇいい匂い!」
竜胆がユリの手を引いてダイニングへ向かう後ろで、
蘭は無表情のままだった。
食卓を囲みながらも、蘭は目も合わせない。
今夜は3人で眠る日だったが、
蘭は何も言わずに自室へ戻っていった。
「仲直りしねぇの?」
「う〜ん…私怒ってるわけじゃないんだよ…
ただ今回のことは、ちゃんと話がしたいかな…」
とユリは悲しげな笑みを浮かべながら答えた。
家族や、普通の生活を捨てても、
2人と一緒に生きていくと、最終的に決めたのは自分だ。
ただ…これからの人生ほとんどの時間を、
2人の帰りをただ待って、
この部屋の中だけで過ごすことになるのは…
流石に耐えられないと、ユリは思い始めていた。
―――――――――――――――――――
進展のないまま1週間が過ぎた頃。
2人を見送った後、ユリは急な眩暈と吐き気に襲われた。
少し休めば楽になったため、
疲れていたのかな、と気に留めなかった。
しかしその翌日、朝食を作ろうと、冷蔵庫を開けた瞬間。
耐えられない吐き気に、ユリはトイレに向かった。
そこで初めて気づく。
そういえば、生理が遅れてる?
もしかして…
―――――――――――――――――――――
2人に悟られぬよう、なんとか演技をし、
笑顔で見送った後、ユリは考えた。
どうすればこの部屋から出られるだろう?
きっと2人に気づかれずに出ることは不可能だ。
それでも、どうしても確かめなければ…
ユリには蘭の反応が予測できなかった。
喜んでくれる?
いや…蘭はきっと、それが例え自分の子であっても、
自分以外に意識が向くことを、きっと許さない。
ベッドに寝転がって天井を見上げると、
寝室の隅に取り付けられた火災報知器が目に入った。
ユリはその日の午後、計画を立て、
翌日を決行の日に決めた。
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作者名:あたそ | 作成日時:2023年3月20日 23時