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蘭と竜胆のマンションを出て、ユリはすぐに携帯を確認した。
これまでに無断外泊などしたことはなかったし、
祖母と父はものすごく心配しているだろう。
しかし届いていたのは、祖母からのメールだけだった。
「お友達にご迷惑をかけないようにね」
よく分からなかったが、とりあえず家に帰ると、
エントランスの前にサトシがいた。
明らかにユリの服ではないスエットを、サトシはジッと見た。
「もしかして…サトシが連絡してくれたの？」
「おばあさんには、
皆で友達の家に泊まることになったって言っといた」
「なんで…庇ってくれるの？」
「別に…
でも、お前、自分の立場とか考えねぇの？」
「どういう意味？」
「あいつらと関係があるって知って、
それでも皆が受け入れてくれると思うか？」
「サトシは私のことを心配してくれてるんだよね。
それは感謝してる。
でも…わたし、蘭ちゃんのことが好きなの。
人殺しでも、何をしてても、好きなの。
だからもう、他の人にどう思われても気にしないよ」
キッパリと言い切ったユリに、
サトシはそれ以上何も言えなかった。
翌日から、サトシだけではない、
学校の友達は少しずつよそよそしくなっていった。
―――――――――――――――――――――――――――――
それからの2年間。
ユリは学校では勉強にのみ打ち込んだ。
祖母が入院することになった時は、流石に泣いてしまったが、
自分には蘭と竜胆がいる。
そう思えば、大抵のことには耐えられた。
2人が大きなチームに入ったことで、
また外出は制限されるようになったものの、
父が夜勤のに日には、
こっそり家を抜け出して2人のマンションに泊まった。
ある朝、賑やかな音に驚いてリビングへ行くと、
竜胆とその友達がパーティーをしていたり。
私の寝起きの姿を見たからと言って、
蘭ちゃんがその場にいた子たちを殴って正座させたり。
18歳の誕生日に、蘭ちゃんが勝手に婚姻届を出そうとしたり。
大学を卒業するまでは待って欲しいと言うユリに、
蘭は1週間も拗ねたままであったが、
楽しみは先に取っておいた方が良いという言葉に、
簡単に絆されてくれた。
色々なことがあったが、この上なく幸せな時間だった。
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作者名：あたそ | 作成日時：2023年3月20日 23時
