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髪型こそ変わっていても、一目で分かるその姿。
突然現れた昔の恋人とその弟を、
ユリは幻を見るかのように見つめ返した。
「元気だったぁ？」
「どうして…ここ…」
「ん〜…たまたま？」
昔から飄々としているようで、
その実計算高い蘭のことは、誰よりもユリが知っていた。
「まぁ…どうしても直接聞きてぇことがあってさぁ…」
「…何？」
「白紙の手紙って…なんか別の意味があんの？」
「なんのこと？」
「コレお前が書いたんじゃねぇの？」
蘭が封筒を見せる。
もちろんユリにも見覚えがある。
「私は…ちゃんと書いたよ。
会えなくてもずっと思ってるって。
いつかどこかで待ってるって。
返事をくれなかったのは蘭ちゃんじゃない…」
「は…？」
気まずい沈黙を破ったのは、
いつの間にかトイレから出てきたサトシだった。
「ゴメン…手紙は俺がすり替えた…」
信じられない、という表情をするユリの前で、
蘭は珍しく声を出して笑った。
「俺らバカだよなぁ…
こんな単純な手に10年も騙されるなんてなぁ？
俺はともかく…
ユリのことまで騙すなんてなぁ…？」
蘭は銃の安全装置を外しながら言った。
「竜胆、先に車で連れてけ〜」
おいでねぇちゃん、と竜胆がユリの手を引いた。
「何する気…？
蘭ちゃん、殺すのはダメ…ねぇ…」
竜胆は抵抗するユリを抱き抱えて、ベンツに押し込み発進した。
それを横目に確認してから、蘭は銃口を向けた。
「相変わらずアイツは優しいなぁ…
でも…俺が何者か、分かるよな？」
蘭は喉仏にある刺青を、シャツの襟元を緩めて見せた。
そして引き金を引くと、1発の銃声が聞こえた。
それはユリの耳にも届いていた。
――――――――――――――――――――――――
蘭はサトシを撃ちはしなかった。
ヘラリと笑いながら蘭は言葉を続けた。
ただし銃口は向けたまま。
「俺こう見えて優しいからなぁ…
ま、自分のせいでお前が死んだって、
ユリが思ってくれれば、別にどーでもいいわけ…
その代わり、アイツの親父に伝えろ。
梵天には手を出すな。
ユリを取り返しにでも来た時は、
アイツを殺して俺も死んでやるから。
お前も、ユリには生きててほしーだろ？」
サトシが震えながら頷いたのを見て、蘭は銃を下ろした。
「じゃ、車は俺が貰うから、お前はテキトーに帰れば」
蘭は2人が乗ってきた車で出て行った。
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作者名：あたそ | 作成日時：2023年3月20日 23時
