ボイス42 ページ42
告白からしばらくが経ったある日のこと。
『はーい、じゃあ今日はここで終わりたいと思います。まぁ次もね、楽しみですねこれ』
スマホの動画サイトから聴こえる彼の声。すぐさまエンディングが流れていく。画面の向こうにいるのは、「ジャック･オ･蘭たん」もとい…私の彼氏なんだ。そう思うと、いつもより動画が愛おしいものに思えてきてならない。
「おーい、彼氏はこっちにいるんですけどー」
ノートパソコンからも同じ声がする。また在宅ワークへと戻された私たちは、二人で仕事をしていた。
「…ていうか休憩中に俺の動画見るのやめて、はずい！本体に構ってよ」
彼はむすっとした顔でこちらを見てくる。こうして見ると、蘭たんのイメージそのままで笑ってしまいそうになる。あぁ、好きだなあ。
「はいはい、蘭くん、どうしたの」
「……やっぱり俺より『蘭たん』のほうが好きなの？」
そっぽを向いた彼を宥めるようにして言葉を絞り出す。
「ど…どっちも…好きですけどね、私は」
こういうことを言うのはやっぱり慣れない。体中の熱が上にどんどん集まってきて、恥ずかしくなり近くにあったクッションで顔を覆った。
「あ〜、照れてる顔隠すのダメッつったじゃん！」
「やだ！恥ずかしいもん！」
他愛もないことで喧嘩して、笑って。そんな日常を過ごすのが、とても楽しい。彼にとってもそうだったらいいな、なんて思う。
ふと蘭くんの後ろにある棚に目をやると、彼が以前まで使っていたボイスチェンジャーが見えた。もう、アレも使うことはないのだろうか。そう思うと、ちょっと嬉しいような寂しいような、複雑な気持ちになってしまった。
そんな私の視線に気づいたのか、彼は棚からボイスチェンジャーを下ろして口元に近づけた。あ、あ、とテストをしてから、言葉を紡ぐ。
「…俺も、Aさんのこと好きだよ」
天邪鬼な彼が口にする言葉は甘くて、でもやっぱりデスゲームの主催者みたいでおかしくて、笑ってしまう。
この声から始まった恋。
振り回し振り回されて、ときにときめいて。
そんな時間を教えてくれたボイスチェンジャーが愛おしくてたまらなくて、画面の中の彼とともに、じっと見つめてしまうのだった。
fin.
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メタ子(プロフ) - トゲピーさん» 返信遅くてすみません！！ありがとうございますーー！！！！！！ (2022年5月3日 23時) (
レス) id: 304efcf4b3 (このIDを非表示/違反報告)
トゲピー - はーー！すきーーー！天才かよーー！！！ (2022年4月3日 22時) (レス) @page45 id: 82454dfd4a (このIDを非表示/違反報告)
メタ子(プロフ) - 咲世さん» コメントありがとうございます！次回作頑張りたいと思います…🤗💕 (2022年2月23日 17時) (レス) id: 304efcf4b3 (このIDを非表示/違反報告)
咲世(プロフ) - 完結お疲れさまでした！この作品の蘭たんとても好きです！次回作も気長に待ってます！ (2022年2月23日 14時) (レス) @page42 id: d952fb547f (このIDを非表示/違反報告)
メタ子(プロフ) - しいなさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけてうれしいです…！気長に待っていただけるとうれしいです〜🤗 (2022年2月23日 11時) (レス) id: 304efcf4b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：メタ子 | 作成日時：2021年6月11日 1時
