ボイス40 若尾side ページ40
彼女と別れた帰り道。
俺は道端でガッツポーズをしていた。周りの人からは変な人のレッテルを貼られているだろうが、今日くらいはどうでもいい。
Aさんと付き合えたのだから。
名前呼びは早計だったかと肝が冷えたが、彼女の照れた顔が見られた上に、俺自身も名前で呼んでもらえて胸にじんと温かいものが広がって…逆にやってよかったと思えるほどだ。勢いに任せてみるものだな、とひとり頷いた。
家の鍵を開けソファに体を預けると、今日の出来事が走馬灯のように頭の中をぐるぐると巡る。
……ふと、彼女の告白の言葉が気になった。
『若尾さんが何でも話してくれるような…若尾さんにとっての特別な存在、に…なりたいです！』
「何でも話してくれるような…かぁ」
棚の上に置いてあるボイスチェンジャーに目が留まった。通信状況で伝えられる俺の声と、現実で伝えられる声には若干の差異がある。だからリアルでは普通に話しているけれど……zuumや電話だとどうしても『あの』声になるのだ。
身バレ防止のために買ったこれは、彼女との溝をつくるものでもあって…胸が痛む。
…言ったほうがいいのだろうか。俺がジャック・オ・蘭たんであること。きっと彼女は驚くし戸惑うんじゃないか。配信者の彼女なんて格好の餌食だし…ネットで何か言われて傷ついたり、危険に晒したりしてしまうのも怖い。
────だけど。
俺は無料通話のボタンをタップした。
彼女が俺の本当の姿を知らないままで不安になることが、この世で一番怖いことだと思ったから。
コールをする時間が、長く長く感じられる。
「もしもし？蘭くん、どうしたの？」
可愛くて、独占したくて、大事にしたくて。そんな彼女の声が、俺を呼んだ。喉に何かが詰まったようになって、黙ってしまう。
「蘭くん？で、合ってるよね…？」
俺は、なんとか口から言葉を漏らした。
「……そう、だよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 216人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メタ子(プロフ) - トゲピーさん» 返信遅くてすみません！！ありがとうございますーー！！！！！！ (2022年5月3日 23時) (
レス) id: 304efcf4b3 (このIDを非表示/違反報告)
トゲピー - はーー！すきーーー！天才かよーー！！！ (2022年4月3日 22時) (レス) @page45 id: 82454dfd4a (このIDを非表示/違反報告)
メタ子(プロフ) - 咲世さん» コメントありがとうございます！次回作頑張りたいと思います…🤗💕 (2022年2月23日 17時) (レス) id: 304efcf4b3 (このIDを非表示/違反報告)
咲世(プロフ) - 完結お疲れさまでした！この作品の蘭たんとても好きです！次回作も気長に待ってます！ (2022年2月23日 14時) (レス) @page42 id: d952fb547f (このIDを非表示/違反報告)
メタ子(プロフ) - しいなさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけてうれしいです…！気長に待っていただけるとうれしいです〜🤗 (2022年2月23日 11時) (レス) id: 304efcf4b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メタ子 | 作成日時：2021年6月11日 1時
