10年後、あなたとー４ー ページ4
俺は合流したばっかだったから、今日は別室で軽めのトレーニングだけ。
ボール触りたいなって思ったけど、コンディション調整のためにグッと我慢した。
ラッキーだったのは、トレーニングの間中、Aさんが付きっきりだったこと。
まあ、データ計測とかヒアリングとかのためだけど。
それでもAさんと居られるのが嬉しかった。
石川｢Aさん、ちゃんとアナリストになってて凄いっすね。しかも敏腕とか言われてたじゃないっすか｣
｢え、嬉しいけど誰がそんな事を？｣
石川｢有志が前に言ってたんすよ。ジェイテクトの敏腕アナリストだーって｣
｢そっかぁ。じゃあ西田くんには、褒めてくれたお礼にご飯奢ってあげようかな｣
石川｢あいつ、めっちゃ食うっすよ。Aさんの財布スッカラカンになっちゃう｣
｢ええっ(笑)そんなに？でも祐希だって結構食べるでしょ？体、かなり大きくなったじゃん｣
石川｢Aさんが、『祐希は日本代表の中心選手になる』って予言したから。それ外したら悪いなーって思って必死だったんすよ？｣
｢じゃあ、今の祐希があるのは私のおかげだね。褒めて褒めて！｣
本当に嬉しそうに、そんな事を言ってくるものだから。
まだちょっとお子ちゃま扱いされてんのかな？なんていう思いもよぎって。
ちょっと現実を分かってもらおうと、ストレッチをする俺の横に座っていたAさんを抱きしめた。
｢え、ちょ……っと。祐希、離してよ｣
Aさんはグイグイと俺の肩を押して離そうとするけど、そんなんで剥がされるほどヤワな体してねーから。
石川｢褒めてって言ってきたのAさんでしょ？｣
｢これのどこが褒めてんの？｣
石川｢まだ褒めてねーし。これから褒めようとしてんの。だからちょっと静かにして｣
するとスッとAさんの体の力が抜けて、肩を押し返していた手も降ろされた。
意外と素直。
石川｢Aさんのおかげで、俺は日本代表のキャプテンにまで昇り詰めることができた。あの言葉が無かったら、代表でここまでやれてなかったと思う。本当にありがとう、ございます｣
｢……最後だけ敬語って｣
石川｢感想そこなの(笑)｣
｢でもありがとう。私も祐希が頑張ってるの知ってたから、負けないように必死でアナリストの勉強頑張ったよ｣
祐希とまた、一緒に戦いたかった。
その言葉だけでもう。
今日までの10年間、ひたすらバレーに打ち込んできて良かったって思う。
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作者名：めー | 作成日時：2023年10月28日 12時
