もしも龍神さんがクラスメイトだったら……３ ページ22
有志｢あ、いたいた。はいこれAにあげる｣
体育館に入ってくるなり、私を見つけた有志が小さな紙袋を差し出してきた。
｢えー？なにこれ｣
有志｢開けてみ？｣
壁際に座っていた私の隣に腰を下ろした有志が、期待の眼差しで私を見てる。
これ、今すぐ開けないといけないやつか……。
受け取った紙袋はほんのり温かくて、少し重みがある。
中には、いかにも熱そうなドリンクが入った紙コップ製のタンブラー。
と、私の好きなスナック菓子。
有志｢さっき売店で買ってきた。昼飯のお礼な。ほうじ茶オレとお菓子。これA好きやろ？｣
｢うん、好き。ありがと有志｣
有志｢お、おう……｣
それ熱いからやけどすんなよ！と言い残して、有志はダッシュでみんなの元へ行ってしまった。
お昼ごはんのお礼とか、案外律儀だなあ。
せっかくだから飲んじゃおうかな。
でも体育館内は飲食禁止だし、２階のギャラリーで練習見ながらにしよっと。
カバンと紙袋を持ってよいしょ、と立ち上がると、視界に入ったのは待ちに待った大好きな人の姿。
｢マサくん！｣
柳田｢おー。Aじゃん。なにしてんの｣
｢ちょっと見学！藍のこと待ってるんだー｣
柳田｢藍ねぇ。あいつまだAにくっついて回ってんの｣
相変わらずだな、と鼻で笑うマサくん。
でも決してバカにしてるとかじゃなくて、可愛い教え子を見守るコーチ目線。
マサくんは男子バレー部のOBで、今はコーチをしている。
そして、私とマサくんはいとこ同士。
私がこの高校に進学を決めたのも、マサくんがバレー部のコーチをしてるから。
私はマサくんが大好きだ。
優しくて、頼もしくて、私がどんなワガママを言っても文句一つ言わずに聞き入れてくれる。
両親からは｢あんまりAを甘やかさないで｣って言われたみたいだけど、｢間違ったことはしてないから俺のやりたいようにやる｣と一刀両断。
別に恋愛感情は無いけど、きょうだいのいない私にとってマサくんはかっこよくて大好きなお兄ちゃんなんだ。
柳田｢今日はなんで藍待ちなの｣
マサくんが聞いてきたので、タツくんのことを伝えると｢じゃあさ、｣とマサくん。
柳田｢俺、車だし。練習終わったら一緒に行く？｣
｢いいの？！……あ、でも藍が、｣
柳田｢藍には宿題出すから大丈夫｣
宿題ってなんだろ？と思ったけど、思いがけず飛び込んできたマサくんの誘いに断る理由もなくて、二つ返事でOKをした。
藍、許せ……。
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作者名：めー | 作成日時：2023年10月28日 12時
