まるで双子のようにー１０ー ページ16
あの時、あんな言い方をしたのは……
小川｢Aが、……遠くに行っちゃうのが、その……寂しかった。生まれた時から大学まで、すぐ会える距離にいたから。だからAが遠くに行っちゃうなんて、思って無くて。それで｣
｢そっかぁ……。そんな風に思ってくれてたんだ。智大は、私が遠くに行くのが寂しかったんだ？｣
顔は見えないけど、フフッとAが笑うのがわかった。
なんか、弱み握られたみたいで嫌だな。
小川｢……そうだよ悪いか。Aの隣はずっと俺の場所だって、勝手に決めてた俺を笑えば？おめでたいやつ、って｣
もう、ヤケクソ。
寂しがってたのをバラしちゃったら、それ以外のことなんて全然かわいく思えてくる。
｢智大って昔っからそうだよね。照れると開き直るの｣
小川｢……そのなんでもお見通し、みたいなの嫌だ｣
｢だってわかっちゃうんだもん。仕方ないじゃん、20年以上いつも一緒にいた幼なじみだよ？……でもさ。でも……、もう幼なじみは嫌だな｣
小川｢……え｣
なんで？
俺がイタリア行きを素直に応援しなかったから？
代表で一緒になっても、いつも言い合いしたり、藍みたいに気の利いたことも言えないから？
俺とAを繋ぐ、《幼なじみ》という誰にも分け入ることのできない関係。
一生無くならない、確固たるものだと思ってたのに。
今度こそ、本当にAが手の届かないところまで離れていってしまうのかと不安になって、今まで見れないでいたAの顔に視線を向ける。
｢そんな捨てられた子犬みたいな顔しないでよ(笑)｣
小川｢だって、A……なんで？幼なじみ、嫌って……｣
｢うん。嫌。智大はどうなの？私、智大も同じ気持ちだと思ってたんだけど……違ったかな？｣
小川｢……違うくない。俺も、幼なじみじゃなくて……｣
そこまで言って、もう。
我慢できなくて。
Aのこと、ぎゅっと抱きしめた。
｢苦しいんだけど(笑)｣
小川｢ね、いつから？いつから好きだったの？｣
｢えー、分かんない。気づいたら好きだった、みたいな？｣
小川｢俺も｣
｢え、なにそれズルい。私に言わせといて智大はそれだけ？｣
小川｢素直じゃなくてごめん。いじわる言ってごめん。優しくなくてごめん。……でも、ありがと。俺のこと好きでいてくれてありがと｣
｢……うん。どういたしまして｣
小川｢Aのこと、すげー好き｣
知ってるよ、って言うA。
手のひらで転がされてる気分だけどそれでもいいや。
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作者名：めー | 作成日時：2023年10月28日 12時
