まるで双子のようにー９ー ページ15
藍がいなくなって、Aと二人きり。
色々と気まずくて、何を話したらいいか分かんなくなった。
その沈黙を先に破ったのはA。
｢覗き見とかいやらし。変態か｣
小川｢ごめんて｣
ほーら。やっぱり言われた。
予想通り過ぎて笑えてきて、笑う場面じゃないのに顔がにやける。
｢なんで笑ってんの？頭大丈夫？｣
小川｢大丈夫だし。それよりさ、あの曲……｣
｢ああ、合唱の？なんか、聞かれたと思うと恥ずかしいけど。私は智大と一緒に獲った賞だって、本当に思ってるから｣
小川｢うん。それ聞いて嬉しかった。……あのさ、あの、イタリア行くって言ったときのこと、だけど｣
｢……あ〜。うん｣
立ってるのもあれだからここ座りなよ、とAが自分が座っているピアノ用の長椅子のはじっこを空けてくれる。
って言っても一人用の椅子だから狭くて、Aとピッタリ肩を寄せ合って座るかたち。
いつもなら｢狭いよ｣とか｢こっち来んな｣とか言い合うところだけど、今はこのくらい近いほうが顔が見えにくくてちょうどいいかも。
今まで本当のこと言うなんてカッコ悪いって思ってたけど、このままじゃだめだって思ったから。
Aとは、いつだって本音で言い合える関係でいたいって思ったから。
それに、嫌われるのだけは嫌だったし。
今、このタイミングでちゃんとAと話しておかないと。
そう思ってAに気づかれないように静かに気合を入れる。
せっかく藍がチャンス作ってくれたんだしね。
小川｢あの時、素直にAのこと応援してやれなくてごめん。本当は頑張って欲しかったし、思い切った決断をしたAのこと応援したかった｣
｢じゃあなんであんなこと言ったの。私、智大なら喜んでくれると思ってたのに。あんな……責めるような言い方されてすごくショックだったんだから｣
初めて智大から拒絶された感じがして悲しかった。
その言葉を聞いてズキンと胸が痛む。
でもあの時、俺からイタリア行きを責められたAはもっと悲しかったんだろうな。
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作者名：めー | 作成日時：2023年10月28日 12時
