まるで双子のようにー７ー ページ13
《Aさんめちゃくちゃうまいですね！》
《小川さんこんなの独り占めしてたんすか？ずるいっすよ！》
《あ、いまAさんＷ/Ｘ/Ｙ弾いてます。めっちゃカッコいい！》
《今度はベテルギウス！俺めっちゃ好きな曲でAさんの演奏で歌っちゃいました！》
《次は春よ来い弾いてくれてます！こんなのも弾けるんですね〜！弾いてるときのAさんかっこいっす！》
小川｢あーもう！なんなのさっきから｣
ひっきりなしにくる、藍からのLINE。
誰も実況してなんて頼んでないんですけど。
通知オフにしてやろうかと思ったらまた藍からLINEがきた。
《小川さん早く来てくださいよ。そうやないといつまで経っても二人の仲こじれたまんまですよ》
藍のことだから、俺が行くまでこうやってLINE送ってくるつもりだろ。
それはそれでウザい。
『いま行くから静かにして。LINEウザいし』と藍に返して喫茶コーナーに向かった。
入り口まで来たけど、ピアノの音は聞こえない。
代わりに二人の話し声が聞こえる。
中に入りそびれて、そっと中を覗いてみる。
藍｢じゃあ今度は……Aさんが一番思い出に残ってる曲とか。なんかあったら聴きたいっす｣
｢一番かあ……。うーん……、よし。おっけー。これ、合唱の伴奏だからメロディ無いけどいい？｣
藍｢全然オッケーっす｣
合唱……？
小中高通してAが合唱の伴奏やったのって１回だけだから……
もしかして、と思いながらAを見ていると、懐かしい曲が聴こえてきた。
『手紙 拝啓 十五の君へ』
中３の校内合唱コンクールでAが最優秀伴奏者賞とった時のだ。
昔と変わらない音色に、当時のいろんな記憶が蘇る。
約５分の演奏の間、俺も藍もじっとAを見つめながら聴き入っていた。
藍は｢すげー｣なんて言って拍手してるけど、俺には思い出がありすぎて言葉が出てこない。
藍｢Aさん、なんでこの曲選んだんです？｣
｢この曲ね、中３の時に合唱コンクールで演奏したんだ。伴奏なんて自信なかったんだけど、クラスにピアノ弾ける子がいなかったからやらざるを得なくて｣
そうそう。
俺はAが大勢の前で演奏するの苦手だって知ってたから黙ってたのに、誰かがAがピアノ弾けるってバラして。
乗り気じゃない子に無理矢理やらせるのはよくない、って言ったんだけど、担任にも頼み込まれて断りきれなかったんだよな。
｢うまく弾ける自信ない｣って弱音吐いてたの慰めたっけ。
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作者名：めー | 作成日時：2023年10月28日 12時
