まるで双子のようにー５ー ページ11
思いっきりシュンとした様子で静かに手を洗うA。
いつもと同じ流れなのに、Aの顔がいつもより落ち込んでるように見えるのは気のせい·····じゃないよな。
小川｢どうしたの。いつもより元気ないじゃん｣
｢……｣
小川｢まあ、言いたくないなら無理に聞かないけど｣
｢……智大。私ってさあ、面倒くさい？迷惑？｣
小川｢……は？なんで？｣
｢こっちが質問してんのに質問で返さないでよ。ばかなの？｣
小川｢……｣
うーん。
元気なさそうに見えたのは、やっぱ気のせいだったか？
｢もっかい聞くよ？私って面倒くさい？こういうの、智大にとって迷惑じゃない？｣
小川｢別に、そんな事ないけど。Aは昔っからこうだし、迷惑とか思ったことない｣
｢でもさ、私もう20代後半だよ？いい年して虫で泣くとかさ。智大なら、だっせぇとか言いそうなのに｣
待て待て。
Aの中で俺ってどういう人間なの？
俺、Aにだっせぇとか言ったことあったっけ？
……あるな。
小川｢別にそれがAなんだからいいんじゃねえの？無理なもんは無理なんだし。それを否定するようなやつは人として終わってるわ｣
｢そっかぁ。そうだったね。智大は、口は悪いけどそういうとこ分かってるやつだっだね｣
小川｢それ、褒めてんの？ディスってんの？笑｣
｢褒めてるに決まってんじゃん。あーあ、……みんな智大みたいに理解あるやつだったらよかったのになぁ……｣
小川｢なんだよそれ。なんかあった？イタリアで男にだっせぇとか言われた？｣
自分で聞いといて、ソッコーで聞かなきゃよかったって後悔。
仮に本当にイタリアで男絡みの悩みがあったとして、俺に何ができんの？
いいやつぶってアドバイスでもする？
｢智大……なんで知ってるの？あ、藍に聞いたんでしょ？！｣
小川｢は？違うし。ていうか藍に相談してるんなら俺に言ってくんなよ。心配して損したー｣
｢なにその言い方……幼馴染に相談しちゃだめなの？智大には何でも相談できるって思ってたのに、今までだってそうだったのに。……智大、日本代表に選ばれて変わった？ちょっと代表で活躍して人気出てきたからって調子乗らないでよね！｣
小川｢あ！おい！ちょっと！｣
手を洗い終えたAは、タオルを俺に投げつけると振り向かないで体育館に戻っていった。
小川｢あー……くっそ……｣
こんなつもりじゃなかったのに。
藍に相談してるって聞いて悔しくてあんな悪態ついてしまった。
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作者名：めー | 作成日時：2023年10月28日 12時
