10年後、あなたと《石川祐希》 ページ1
東京オリンピックが終わって、ナショナルチームのシーズンも終わりを告げた10月。
現監督の任期が満了となって、新体制が発表された。
今シーズンからイタリアに移籍してきた有志と会って、飯を食いながらその情報をネットで確認する。
ブランコーチが新監督か。
まあ、今までもブランコーチ主導でやってきた部分もあるから、きっとスムーズに新体制に入れるだろ。
石川｢……え、｣
新体制の情報を追っていて見つけた関連ニュースに、思わず画面をスクロールしていた手が止まる。
西田｢どうしたんすか？｣
石川｢あ、いや……。アナリストに女性が入ってるって思って｣
西田｢ああ！Aさんっすよね！｣
石川｢え、お前しってんの？｣
西田｢Aさん、ジェイテクトのアナリストなんで。俺が入ったときにはすでに敏腕アナリストとして大活躍でしたよ｣
石川｢あ、そう……｣
そっか。
ちゃんと夢、叶えたんすね。
西田｢Aさんがどうかしたんすか？あ、まさか……一目惚れ？！｣
石川｢違うよ(笑)この人、高校の先輩｣
西田｢あ、そうなんすか？大学は出てるって聞いたけど、高校までは聞かなかったな〜｣
梶浦Aさん。星城高校の2個上の先輩。
でもそれだけじゃない。
俺たち男子バレー部のマネージャーだった人。
いつも元気で笑顔を絶やさなくて、些細なことでも選手を褒めてくれる。
仕事は早いしキビキビ動くし、部員全員から慕われてた人。
俺も例に漏れず。
ちょっとだけ、……いや、かなり？Aさんのことが好きだった。
慕うどころじゃない。
本気でAさんに夢中だった。
当時はお子ちゃま扱いされて相手にされなくて。
でもそんなんで諦めるなんて考えは俺には無かった。
『祐希は絶対に日本代表の中心選手になる。私は、日本一のアナリストになってみせるから。近い将来、ナショナルチームで会える時が来るかもね』
予言めいたAさんの言葉。
その言葉通り、俺は代表でキャプテンを任された。
来年ももちろん、代表に選ばれるように最高の準備をしていく。
Aさんはクラブチームでの仕事ぶりを買われて、代表スタッフの仲間入り。
Aさん。
近い将来とはならなかったかったけど、むしろ10年も経ってるけど。
またあなたと一緒に戦えるチャンスが来たことに、今すごくわくわくしています。
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作者名：めー | 作成日時：2023年10月28日 12時
