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19 ジコ ページ19

この店の中にいると外の暑さと喧騒など別世界のように感じる。
静まり返った店内にペンを走らせる音だけ。
氷がカランと音を立てた。
店のじいさんが立ち上がると、ギシッと音を立てるイス。
目をやるとカウンターの中へコツコツと入っていく。
カチャカチャと食器の音がして、バタンと扉が閉まる音がした。


息を1つ吸い込んで吐き出す。
体の力が抜けていくのが分かった。
いつからか、ずっと気を張っていたのだ。
山積みの仕事、くだらない人間関係。
やっと目を背けられた。
少しの間でも。


壁に頭をつけながら、前のソファに差し込む光を見つめる。
瞼も重たくなってきた。
こんな所で寝たらまずい。
まぁでもちょっとだけなら。
こうやって自然に寝るのはいつぶりだ。

なんて頭で考えながら目を閉じる。


「っあぁ〜〜〜ワカンナイ!」

ガシャン

思わず組んでいた足がテーブルにぶつかる。

反射的に顔をあげると女がイスの背もたれによりかかり、両手をあげている。
ギョッとした顔をして俺を見つめてる。

「あっ!!」

またものすごい大声を出して立ち上がる。
イスを引いて飛び出してくるからテーブルの上の本はバサバサとまた音を立てて落ちる。

「あぁっ!」

ガタンッ
灰皿が床に落ち、タバコと灰が散らばる。

イスにかけてあった上着を手に持ち、狭い店の中いつのまにか俺の目の前に立ってる。
この女が立てる音に気を取られていた。

「ごめんなさいっ」

突然足を触られて手を払いのけた。

『はっ?うわっ』

やっと気がついた。
テーブルの上のグラスが倒れ、俺の足にかかっている。

「どうしよう〜ごめんなさい」
「1人だとばっかり思ってて、、」,

話しながら白いものでシミを抑えている。

『あぁ。いいから』

騒がしい声に嫌気がさす。
それに、

『これあんたの服だろ』

足にかけられたものを手に取る。
白いパーカーだ。
所々薄く茶色いシミがにじんでいる。

「そうです、、」

しゃがみこんでいた女が俺の顔をみてパーカーを受け取る。
髪を片方耳にかけ気まずそうに目を動かしている。


「あの、クリーニングさせてください」

伝票を持って立ち上がった俺の動きを遮るように目の前に立っている。

ズボンを見下ろすと右足の太ももに薄茶色のシミがある。


『いいから』

「でもっ」


めんどくせぇ。
しかもこの女、俺より幼いようだ。
近くで顔を見つめると顔つきの幼さがわかった。
それにこの話し方。

『あんた日本人?』

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メイベル - 1~5まで全話読ませていただきました!とても面白かったです(^-^)もしよろしければユグォンのお話をもっと見てみたいです!更新お待ちしております(_ _) (2019年12月28日 16時) (レス) id: 398ec1baa9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らん | 作成日時:2017年1月9日 23時

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