short story my zone 5 (ページ13)

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13 ビボムページ13

週末のこの時間。

いつものバーのカウンターに向かう。

カランと音を立てて開くドアにマスターが顔をあげて微笑んでくれる。

ガヤガヤと人の声が心地よいボリュームで。

お目当の背中を見つけて両肩にポンっと手を置いた。

「おまたせっ」

顔を覗き込みながら言うと少しだけ振り返る茶色の髪。

『待ってない』

グラスを片手に持ちながら冷たく笑うミニョク。

「嘘だぁ。私に会いたかったって顔してるよ」

隣の席に座りながらマスターに注文する。

『ポジティブすぎ』

「そう？」
「でもいつも待っててくれるじゃん」

『待ってない。ここが好きなだけ』

「1人でくるのが？」

『1人になりたい時もあるから』

「ふーん」

そう言ってマスターが出してくれたグラスに口をつける。

「ミニョク」
「彼女とは順調？」

『普通』

ハハッとミニョクが笑うから高鳴る鼓動。不意打ち。

「なに？」

『別に』

でもすぐにいつものクールモード。

「今日もだめ？」

『なにが』

「...遊んでよ」

ミニョクが飲みかけていた手を止める。

『だめ』

「なんで！」

『普通だめだろ』

「私はいいと思う！」

『無理』

「なんでー」

カウンターにべったりと突っ伏してしまう。

「こんなにミニョクの事好きなのに」

『残念』

頬を膨らませてみるけど見事にスルーされる。
いつもそう、ミニョクは余裕があって。
私はこれでも本気なのに。
って、ミニョクも知ってるけど。

「気が向いたら、ね？」

『向かない』

こんなにフラれ続ける女なんているのかな。

グラスに残っていたアルコールをぐっと飲み干して。

「おかわり！」

はいはい、と苦笑いのマスター。

そんなやりとりを何回も繰り返して。
隣で涼しい顔して飲んでるミニョク。

気がつけば顔をが相当熱くなってた。

「ミニョクー」

『なんだよ酔っ払い』

「1回だけでいいから」

なんて手を顔の前で合わせて拝んで見せる。

するとミニョクがくるっとイスごとこっちを向いて。
カウンターに肘をついて顔をそこにのせて笑う。

なんて可愛いの。

思わず見つめてしまう。

なのにトドメの一言。

『1回でいいの？』

なんて突然甘い笑顔と言葉を発するから。

「ミニョクの好きにしてっ」

って抱きついたら。

『アホか』

おでこをペチッと叩かれて。

『帰るぞ』

いつもみたいに腕をグイッと引かれて。

私の前を歩くのかと思いきや。

今日はなぜか右手が温かい。

見上げるとミニョクの口が少しだけ笑ってた。