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49 ジコ ページ49

「ねぇ、大丈夫?」

俺の顔を見て眉をひそめる。心配そうな顔。

「顔色悪いよ?」

俺の髪に触ろうとするから、手を振り払う。

『いいから』

そう言って振り返りもせず仕事に向かう。




『うるせぇんだよ』

「何その言い方!」

『ほっとけよ!』

「浮気男!ほんとに最低!」

『なんだよ!じゃあ出てけよ!』





「なにその顔」

「わたしの顔なんて見たくないなら帰ってこないでよ!」

『分かったよ!』




顔を合わせるのは1週間に1回あるかないかなのに、お互い顔を合わせればケンカばかり。

ほんとに疲れた。

スランプ。活動休止。焦り。そして私。
ジコを苛立たせている理由はわかってる。

言い合いするたびに傷つく心。
傷つけてしまう言葉。
これ以上一緒にいてなにか意味がある?
なにか生まれる?答えはノー。




Aと別れてからどれくらいだ。
そんなことどうでもいいか。

朝起きて伸びをする。
隣に誰もいない広いベッド。
あぁ、気分がいい。
カーテンをあける。眩しい光が差し込む。

俺はAに依存してた。あいつも俺に甘えていた。
一緒に居れば楽だった。
だけどいつからか、俺の周りのものが全部敵に見え始めて、隣にいて落ち着く存在だったAでさえ、鬱陶しくなった。
帰りたくない家、進まない仕事、自然と足は他の女の所に。毎日別の女、違う女、そんな生活。
家に帰ればAがいる。
少し寂しくなった時もあった。
背中を向けて眠るAを愛しく思った時もあった。
でも口から出るのはお互いをけなし合う言葉だけ。
もうだめだ。俺たちはおしまい。


静まり返ったリビング。
開いてないカーテン。
火の気のないキッチン。
脱いだままの服に散らかったアクセサリー。

こんなのなんともないだろ?
これが俺の望んでたものなんだろ。

いつも明るい日差しが差し込むリビングが、
いつも何か作られて美味しい香りがするキッチンが、
キレイに整頓されていたものたちが、
言葉にされないけど帰ってこない俺を待っているみたいで、腹ただしくて憎たらしくて仕方なかったんだろ。

Aが居ない。

それだけだろ。クソッ


カーテンを開けてみる。
思ったより晴れていないのか、明るくならない。
もう一度カーテンを引く。
俺に必要なのはこんな光じゃない。


もっと大きな、もっともっと大きな光だ。
ステージで走り回る俺たちを照らす光だ。


Aがいない。
それが俺を生きられなくさせるなんて絶対にない。

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らん(プロフ) - すーんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです。中々思うように出来ませんがまた見てください。ありがとうございます (2016年8月20日 1時) (レス) id: be474ec87e (このIDを非表示/違反報告)
すーん(プロフ) - ハマりました!更新まってます! (2016年8月20日 0時) (レス) id: dc57f5d664 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らん | 作成日時:2016年8月17日 0時

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