16 ビボム ページ16
会社のエントランスをぬけてエレベーターでフロアへ。今日は休日出勤。フロアの中はいつもより静か。まばらだけど出勤してるスタッフに挨拶して席につく。
「はぁ...」
泣き腫らした目を隠すようにメイクをしたけど、瞼が重い。体もあちこち痛い。
休日出勤するのも信じてくれるのに一苦労だった。
愛されてるって分かってる。わたしも彼が好き。離れられない。だけど。彼が怖い。
『おはよう。Aも出勤だったんだね』
「ミニョクさん!おはようございます」
ぺこりと会釈。彼の笑顔が眩しい。
スーツを爽やかに着こなして、長い手足が目立つ。仕事もできるミニョクさんは、みんなの憧れ。
『A?それ』
パッと顔をそらす。
『昨日何かあった?』
悲しそうな顔をして、顔を覗き込んでる。
「なんにもないですよ!大丈夫です」
そう言ってパソコンにデータを入力していく。
ミニョクさんがまだ側に立っているのがわかる。
だけど振り返れない。
『俺ならそんな顔させないのに』
後ろから手をついて耳元で囁く。
かあっと顔が赤くなるのが分かる。
『悩み事なら相談にのるよ?今日は送っていくよ!』
「えっ、でも、あの」
『また後で』
手をヒラヒラさせながら行ってしまった。
ミニョクさんはスマートでいつもドキドキさせられる。きっと私と彼が上手くいってないことも分かってるんだと思う。
〜♪
携帯がメールの受信を知らせる
"Aだけが俺の光だよ"
"裏切りは許さない"
手が震える。
いるはずがないのに周りを見渡す。
愛情の表現が歪んでるけど、愛してくれてる。
必要としてくれてる。
これでいいのかなって思う。
お互いを支え合うってこういうこと?
不安定な部分を補い合うってことだよね。
私が我慢すればいいことなんだ。
私はゆぐといれて幸せなんだから。うん。幸せなの。
『Aそろそろどう?』
夕方。ミニョクさんが声をかけてくれる。
「わたしいつも電車で...」
『じゃあ家の近くの駅でまで送るよ』
そう言って手に持っていた鍵をみせてくれる。
「ありがとうございます」
2人並んでエントランスまで向かう。
休日だったと言う事もあってか他には誰もいない。
『あのさ。わかっててこんなこと言うのはズルいんだけど』
『俺じゃダメかな?』
少し困った顔で目を見つめられる。
『彼氏がいるのは分かってる。だけど見てられない』
『俺が守ってやりたい。笑わせてやりたい。最近の顔ちゃんと見たことある?』
60人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らん(プロフ) - すーんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです。中々思うように出来ませんがまた見てください。ありがとうございます (2016年8月20日 1時) (レス) id: be474ec87e (このIDを非表示/違反報告)
すーん(プロフ) - ハマりました!更新まってます! (2016年8月20日 0時) (レス) id: dc57f5d664 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:らん | 作成日時:2016年8月17日 0時