文豪達の理性崩壊注意報(2)

恋慕奪い愛【森鴎外】【福沢諭吉】 ページ1

やらかした。完全にやらかした。
仕事終わりで肩の力を抜いてダラダラ歩いてたのが今日の日の入り前。
後ろにマフィアの狗の芥川がいたことにも気付かずあっという間に誘拐されたのだ。

「首領、連れて来ました」

なぜか私は拷問室ではなくボスの元に連れて来られたらしい。
後ろ手で縛った私は芥川に肩を強く押されて簡単に床に転がってしまう。

「お疲れ様、芥川くん。下がってくれ」

床に転がされているせいでボス…森鴎外の顔は見えなかったが芥川が一礼して部屋を出て行く気配は感じた。

「それと、中也くんも外してくれないかな？」

どうやらまだ人は居たらしい。

「ですが、此奴は探偵社の人員で…首領にいつ危険が及ぶか」

「大丈夫、この子は何の異能も持たない。君には向こうでエリスちゃんの相手をして欲しい」

「…分かりました」

やや低めの声がそう言うと、部屋を出て行った。

「さて、君はなぜここに呼ばれたか分かるかね？」

値段の高そうな絨毯に影がさす。

「どうせ、人質でしょ」

「んー、人質と言われたらそうかもしれないね」

シュッと鋭い刃が私を縛っていた縄を切り裂き、私の両腕は自由になる。

「なっ…」

ここは敵地の真っ只中と雖も、いつ私がボスの命を奪えるという状況になる。
ポートマフィアってセキュリティ低い説。

「何の人質何ですか。今は休戦協定を結んでいる筈ですが」

「面白いことを知ってね」

見上げると森は嬉しそうにふふっと笑った。
私の顎を手袋をした細い指で掬い上げられ、目を離せなくなる。

「A君って福沢殿と恋仲だそうじゃないか」

恋慕奪い愛(2)→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す