怪我６ ページ6
「気付かなくて申し訳なかった。ゆっくり体を右に…そう、足を付けて」
といちいち指示してくれるのが、もう、心が痛い。
恥ずかしすぎる。
手だけでは不安定という事で。
腕にしがみつくようにして補助をしてもらっている。
マジか。この密着度は想定外だよ。
歩数を数え、左に数歩、スイッチはここで…
よし。
「次からはひとりで行けます。ありがとうございました」
帰りのベットまで案内してもらえるなんて思ってなかったよ。
こんなに降谷さんの手を借りるなんて！！！
「今はけが人だ。存分に頼れ。他に何もなければ抗生剤を飲んで寝ていろ」
「はい」と返事をすると手を持たれてコップを持たされる。
「錠剤の化膿止めだ。口を開けて上を向いて」といった。
食事に続いて薬まで介助をしてもらうなんてプライドがもう、崩壊する！！！
「手に乗せてくれれば自分で飲めます」
「…そうか」
なんか残念そうな声だけど気にしないからな。
飲んだ後にコップをそっと手から奪っていった。
どこかに行ったかと思うと、戻ってきた。
「目元の包帯を変えるぞ」
お願いします。と返事をすると今までつけている包帯を取り、ガーゼを取られ少し瞼の裏が明るくなった。
「頬の傷を消毒する。染みるぞ」
冷たいものが頬に触れ、ズキっと痛んだ。
めっちゃ染みる！！！アルコールかコレ！？うわああああ。
「っなかなか…染みますねっ」
「悪いな。これぐらいにしよう。新しいガーゼを貼る」
首の方にまで貼られた。
かすめていく冷たいもの。
「うわっ。降谷さん手が冷たい！？」
「手を洗ってきたからな。いきなり触ってすまない」
上半身をのけぞらして冷たい物から逃れたら謝られた。
「こちらこそ迷惑をおかけしてすみません」
そう言うと額の方に何か柔らかいものが触れた気がした。
「？」
耳が聞こえにくいせいで、音の距離がつかめない。
「何か、額についてました？」
「っ包帯の糸がな。何かあれば呼んでくれ」
そう言って右側の方からガタガタと音がした。
使ったものを片付けているのか。
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
といって部屋から彼の気配が消えた。
この部屋何畳あるのかな…？
今何時だろう。夜？昼？
あぁ、報告書どうしたんだろう。
など、様々な考えがよぎるが、先ほど飲んだ薬の中に眠くなる成分でも入っていたのか、考えが鈍くなって意識が深く沈んでいった。
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作者名：蘭兎 | 作成日時：2020年4月14日 15時
