番外編8 ページ44
一瞬、何が起きたのか理解できなかった。
ただ、井吹の顔がこんなにも近くにあって、そして唇からさっきの感触が離れない。
キス、されてる……。
訳もわからず、催眠術をかけることなんて忘れて私は井吹を呆然と見つめた。
「……俺には吸血鬼の力なんてわからない。
けど、俺の今の記憶無くす位の力はあるんだろ？
それが嫌だったから、妨害した。」
井吹は整った顔をふいと背けた。
だからどんな表情ののかなんてわからないけど
もしかしたらなんて淡い期待が、私の鼓動を速める。
「……だ、だって、吸血鬼だよ？
今みたいに血を吸ってしか生きられない。
それに、今の痛みもなかなか忘れられるもんじゃ……」
うわずったままの声で尋ねると、井吹は更に顔を反らした。
「……お前が生きてられるなら構わない。
それに、痛いどころか気持ちよかった……」
こちらもまたうわずった井吹の声に、私は一際大きい拍動を感じた。
お母さんたちから聞いていた事を思い出して顔が熱くなる。
吸血の時に気持ちよく感じたら、相性がいいってこと。
それがきっかけで、契約者になって、更には恋人になった人も多いって。
お父さんとお母さんみたいに。
「井吹。」
震える声で尋ねる。
こんなに緊張したのは初めてかもしれない。
真っ直ぐに、その瞳を見て、言葉を紡ぐ。
「……私と、契約してくれないか？」
よく考えたら、凄い台詞だ。
なんの説明もなしに契約してくれなんて。
けれど、井吹は何も言わず、ただ抱きしめてくれた。
私は更に顔を赤くして、バスケのユニフォームの襟元を下げる。
綺麗な胸元に、口を近づける。
「ん……」
二人分の吐息が重なる。
井吹の血が、体温が熱い。
二人分の体温が溶け合って、私の身体も熱くなる。
お母さんとお父さんも、こうやって契約したんだ……
口を離すと、井吹の胸元にはくっきりと契約の痣が残っていた。
「……終わったか？」
「……ん。」
素っ気ない会話だけが交わされる。
なんというか……物凄く照れ臭い。
沈黙に耐えられず、私は口を開いた。
「……契約したからには、私が井吹を守るから。」
すると井吹は小さく笑った。
「守られる、の間違いじゃないのか？」
「でも、私の方が強いんだから！」
思わず私も笑ってしまう。
だから私は気づかなかった。
体育館の影から誰かが私達を見ていたこと。
そして微笑みながら宙に消えたことに……
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千桜(プロフ) - Nakamahina0805 (2019年6月12日 20時) (
レス) id: 0d6cf0666b (このIDを非表示/違反報告)
ユッカ - ものすっごく感動しました！！すっごく好きです// (2014年1月7日 9時) (レス) id: 042c3de7ef (このIDを非表示/違反報告)
*ももらんま* - 続編希望です！！この小説すごく好きです///萌えてます///続編まってます(^^) (2013年9月7日 14時) (レス) id: a263b771fc (このIDを非表示/違反報告)
闇猫(プロフ) - 遅いかもしれないけどLINEIDです。yamineko1026です！良かったらいれてください！LINEの名前は蓮藍@厨二病@奈月です (2013年8月31日 20時) (レス) id: 3e9341991a (このIDを非表示/違反報告)
藍苺(プロフ) - 初めまして！！続編読みたいです！！失礼ですが、番外編の続編も読みたいです！！ (2013年8月1日 0時) (レス) id: 45daca7612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬令瑠菜 | 作者ホームページ：http://ameblo.jp/runarunaterulove/
作成日時：2013年3月28日 18時
