番外編6 ページ42
ぼんやりする意識の中、整った顔立ちが目に入った。
井吹はバスケのユニフォームのまま私を抱えてくれている。
周りで倒れてる女子集団を軽く見やったあと、私の顔をのぞきこんできた。
「事情は聞かないが顔色が悪い。
早く保健室に……」
軽々とお姫様抱っこしてくれる井吹の手を、私はゆっくり掴んで首を横に振った。
「保健室じゃ……意味ないから……」
原因は失血。まして吸血鬼の失血は普通の保健室や病院じゃどうにもならない。
「なら、どうすれば……」
井吹がなぜだか悔しそうに歯を食い縛る。
「あ……」
井吹の顔を見つめていた私の視線が少し下に下がる。
白くて長い首筋。
術を使うまで何とも思われるなかったその部位が、今では眩しすぎて私を混乱させる。
「き、霧野……？」
美味しそう。
私はそっと井吹のユニフォームの襟元を下げ、口を着けようとして……
「……っ。」
動きが止まった。
理性なんて吹き飛んで、無我夢中で井吹の血を求めようとしていたのに。
井吹を傷つけたくないと、記憶を変えても、一瞬だけでも井吹に嫌われたくないという気持ちがストッパーをかけてしまう。
「……早く、逃げて。」
「……は…………？」
これ以上井吹といても、ストッパーが正しく働き続けるとは思わない。
私はどうなってもいい。井吹をきずつけたくない……
「私といたら……私は絶対井吹を傷つける。
だから、早く……」
くらくらしそうな頭で、必死に言葉を紡ぐ。
すると井吹は少し黙ってから
「へ……？」
私を抱き寄せた。
ちょうど、私の顔が自分の首筋の前に来るように。
「い、井吹……？」
「……さっきやろうとしてたこと、しろよ。」
思わぬ言葉に、思わず動揺してしまう。
「で、でも……」
「それでお前が助かるなら。」
井吹は一層腕に力を込めた。
井吹は、私が吸血鬼だということは知らない。
けれど、薄々気づいたのだろう。
指で首筋をなぞると、微かな震えと、それを越える力強い生命のリズムが聞こえた。
「……ごめん。」
井吹の優しさが私の最後の理性を溶かした。
白い首筋に、牙を突き立てる。
「っつ……」
ゆっくり、ゆっくり血を飲む。
お母さんの血は、あまりの美味しさで自分までおかしくなりそうだったけど
井吹の血は温かい。
私を包んでくれるような、甘くて、幸せな気持ちになる……。
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千桜(プロフ) - Nakamahina0805 (2019年6月12日 20時) (
レス) id: 0d6cf0666b (このIDを非表示/違反報告)
ユッカ - ものすっごく感動しました！！すっごく好きです// (2014年1月7日 9時) (レス) id: 042c3de7ef (このIDを非表示/違反報告)
*ももらんま* - 続編希望です！！この小説すごく好きです///萌えてます///続編まってます(^^) (2013年9月7日 14時) (レス) id: a263b771fc (このIDを非表示/違反報告)
闇猫(プロフ) - 遅いかもしれないけどLINEIDです。yamineko1026です！良かったらいれてください！LINEの名前は蓮藍@厨二病@奈月です (2013年8月31日 20時) (レス) id: 3e9341991a (このIDを非表示/違反報告)
藍苺(プロフ) - 初めまして！！続編読みたいです！！失礼ですが、番外編の続編も読みたいです！！ (2013年8月1日 0時) (レス) id: 45daca7612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬令瑠菜 | 作者ホームページ：http://ameblo.jp/runarunaterulove/
作成日時：2013年3月28日 18時
