成長 ページ32
「これ……」
柚莉は差し出された刀に戸惑った。
それもそのはず。
あたしがこれを手にした時からずっと大切にしていた刀。
そのことは柚莉もよく知っていたから。
「あたし達からの誕生日プレゼント。」
柚莉に微笑みかけると、柚莉はブンブンと首を振った。
「ダメだよ!!これ、お母さんの宝物でしょ？
それに、それはお母さんしか使えない……」
柚莉の声が小さくなる。
この刀は吸血殺しの力が宿っている。
つまり、その素質がないと刀の力は意味を持たないけれど。
蘭丸はそっと柚莉の頭を撫でた。
「でも、柚莉だって神童に吸血殺しの力の使い方を教わってるんだろ？
俺達に内緒で。」
「え…………!?」
柚莉の大きな目が見開かれる。
あたし達も最近知ったけど、柚莉はこっそり神童の所に通っていたらしい。
自分の中に眠る、吸血殺しの力を目覚めさせるため。
柚莉は吸血鬼であるけれど、あたしの血によって、吸血殺しの力も持っている。
それは知っていたけれど、自分からその力を開花させようと努力していたなんて、神童に言われるまで知らなかった。
「だからこそ、この刀を柚莉に渡すんだよ。
柚莉にも、あたしと同じように暴走した吸血鬼を止めて、守りたい物を守れる力があると思うから。」
柚莉はあたし達の顔を見てから、おずおずと刀を手に取った。
刀をしっかりと抱き、しばらくじっとしてから、柚莉は今までで一番大人びた顔で笑った。
「ありがとう、お父さん、お母さん。」
その顔はワガママな姫の顔ではなく
立派な頼もしい娘の顔だった。
・
・
・
「柚莉、よっぽど嬉しかったんだな。」
「うん。」
幾ら吸血鬼では成人とはいえまだ14歳。
あのまますぐ、柚莉は眠ってしまった。
一振りの刀を、大切に抱えて。
その寝顔が、いつもより大人びて見えるのが少し寂しい。
そっと柚莉の頭を撫でながら、あたしは呟いた。
「……もう、柚莉もあの歳なんだね。」
「あぁ。」
恋しくて堪らなくて、あたしよりずっと大きくなった蘭丸の腕の中に体を納める。
14歳。
あたしと蘭丸が、ただのクラスメイトから吸血鬼とご飯の関係になり
少しずつ近くなって
そして幾つもの運命を越えて、永遠の愛を誓った歳……。
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千桜(プロフ) - Nakamahina0805 (2019年6月12日 20時) (
レス) id: 0d6cf0666b (このIDを非表示/違反報告)
ユッカ - ものすっごく感動しました！！すっごく好きです// (2014年1月7日 9時) (レス) id: 042c3de7ef (このIDを非表示/違反報告)
*ももらんま* - 続編希望です！！この小説すごく好きです///萌えてます///続編まってます(^^) (2013年9月7日 14時) (レス) id: a263b771fc (このIDを非表示/違反報告)
闇猫(プロフ) - 遅いかもしれないけどLINEIDです。yamineko1026です！良かったらいれてください！LINEの名前は蓮藍@厨二病@奈月です (2013年8月31日 20時) (レス) id: 3e9341991a (このIDを非表示/違反報告)
藍苺(プロフ) - 初めまして！！続編読みたいです！！失礼ですが、番外編の続編も読みたいです！！ (2013年8月1日 0時) (レス) id: 45daca7612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬令瑠菜 | 作者ホームページ：http://ameblo.jp/runarunaterulove/
作成日時：2013年3月28日 18時
