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そんな善良な元騎士であるじいちゃんは、今から*年前まだ現役だった。赤子を抱いた女性が魔物に襲われている姿を見つけたらしい。駆け寄った時には既に遅し、女性は喰われてしまっていた。
心が痛みながら、その”女性”が完全に取り憑かれてしまう前に剣で心臓を突き刺した。
そして残った親を失った俺を哀れに思い、育てたのだと。
これが俺が今までじいちゃんから聞いていた内容だった、
……のだが、心臓を突き刺したそのあと。実は、魔物はもう一匹いた。
振り返った時には既に赤子は喰われていて、その真っ黒だった瞳は赤くなり黒い尻尾が小さく生えていた。
だが、自分を見つめる目があまりにも可愛くて殺すことはできずここまで育ててしまったのだ。と。
数日前、じいちゃんがやっと俺に教えてくれた話だ。
『真実を知ってしまえばお前は生きることを放棄しようとするんじゃないかと思い、恐ろしくて言えなかった。』
というじいちゃんに、
俺を殺してしまえば安泰に暮らしていけただろうにどこまで善良なのかと半心呆れてもしまった。
「じいちゃん
俺 これからどーすりゃいいんだよ…」
この本によると、魔物はその人間を喰うとその際のほんの微量たる悪心を大きく大きくふくらませることで思い通りに悪事に手を染まらせることができるようになる…つまり取り憑くことができると書いてある。
俺が魔物に取り憑かれた人間でありながら、心までも悪に染まっていないのはその際に悪心なんて微塵もない『赤子』だったからに過ぎないということだ。
だが、俺を喰った魔物は案外力が強かったようだ。
…
(あ、隠せた)
尻尾を、瞳の色を、隠すことができてしまった。
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作者名:らちょす | 作成日時:2023年1月14日 11時