逃亡、平伏す (ページ2)

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ーーーパタン

じいちゃんが遺していった最後の本を読み終わり、そっと閉じると静かに何も言わず、目の前の机の上に置いた。

絶望と悲嘆が精神と身体を一気に襲い思わず頭を抱えてしまった。

(……よりにもよって、俺はこんなにも畏れられている魔物に転生してたってことか)

正直、前世での記憶は今世で過ごす日々と共に徐々に薄れていき今ではあちらでの一般常識などが思い出せる程度だ。

すっかり俺もこっち側の人間になっちまったわけだ。

昨日じいちゃんの口から聞いた衝撃の話が、本当なのだと分かりこれからの未来が急に不安になる。
　

全く知らなかった。魔物が存在する事は教えてもらっていたが、まさか『自分』がそんな存在だなんて思いもしなかった。
尻尾だって、じいちゃんにないだけで他の人らにはあると思っていた。

だから、いつも山から出て市場へ行く時は俺を連れて行ってくれなかったのか。

…俺が何も知らずに呑気に＊年間も生きてきたのにはある訳がある。

オレを育ててくれたボロ山小屋のじいちゃんのせいだ！

…昨日死んじゃったけど

本にも書いてあったように、市民はただただ、善良なのだ。

前世では『人間』は良い心も悪い心も混合して持っている存在だったが、此処は違うらしい。