marionette doll【霧隠ラント】

7，優しい ページ10

「小学生の頃に、引っ越しちゃってからは…離れ離れになっちゃったんですけど…。
隣同士の家に住んでて、凄く、仲は良かったんです
……それも、昔は。ですね。

ここに来て驚きました。学園シティに着いた時から、なんとなく…評判のほどは聞いていましたけど…まさか、本当にそこまで酷評されているとは、思わなかったので。

…昔の彼は、凄く優しくて…少なくとも、自分の判断で、人が一生懸命やっていることを否定することなんて、絶対ありませんでした。
それが、自分たちの平穏を守るために、戦ってくれた人達…言わば、恩人を否定するなんて、義理堅い彼の行動だとは、到底信じられません。

…ですが、ジンペイ君たちの話を聞いていると…それが真実なんですね。

……私ひとりで、どうにかなるとは思えません。
ですが、昔なじみの私になら…少しは、彼を変えることも出来ると思います。いえ、変えてみせる……
彼を、独裁者にはしたくない…。

…彼から、あなた達YSPクラブを守ります。
必ずや、お力になることをここに誓いましょう。

…お願いです。私を、YSPクラブに入れてくれませんか？私は、彼を変えたい！｣

最後の方なんて、何を言ってるか分からなかった。
ただただ、必死に…頭の中で思いついた言葉を口にだす。
力になるなんて、確証もない。彼を変えられる確証も
だけど、彼らをラントくんに潰されたくはない。
…ラントくんを、潰したくはない…。

だったら、私が…彼らを守って、ラントくんを戻してみせる。

「…なーに言ってんだよ！そんなもん、そんな頼まれなくたって…いいって言うに決まってるだろ！」

「そうだよ！Aさん、顔を上げて。」

「女の子1人で、寂しかったし…例え断られてたって、引き入れるつもりだったし…｣

「お前一人で頑張ろうとすんなよ。チームになるんだったら、望月…俺らを絶対に頼れ｣

「メラ先輩の言う通りだよ！力を合わせれば、穏便に解決出来るはず！」

ジンペイ君が、私の背を叩いて。
サン太夫君に、顔を上げるよう促されて。
フブキちゃんに、可愛く脅され歓迎されて。
メラ先輩に、心強い約束をしてもらって。
マタロウ君に、暖かく迎え入れてもらって。

「…ありがとう……ありがとう、ございます…！！」

顔を上げた私は、流れてきた涙を拭いて。
精一杯の笑顔で感謝を述べた。

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