marionette doll【霧隠ラント】

33，警備 ページ41

あの後…犯人を特定しようと、フブキから話を聞いたのだが…残念な事に、逆光で黒光りしていて、顔まではよく見えなかったようだ。

…だが…仮に見えていたとしても、その人物が誰か分からなければ意味が無い。もしかしたら、Y学園関係者の可能性だって……。

──もし、Y学園関係者なんだとしたら、通学路を通って帰るのは危ないな。
通学路以外の道から帰るのは、基本的には禁じられている。しかし、Y学園関係者がストーカーだった場合は、話が別だろう。
通学路なんて歩いていたら、まさに『飛んで火に入る夏の虫』だ。

──という訳で、私達は遠回りして帰ることにした。
寮の正面入口から帰るのも、危ないと判断し…フブキを裏口まで送り届けることにした。
二人で歩いているうちは、ストーカーの気配は感じなかったらしく『ありがとう』と深々お辞儀をして、フブキは裏口から寮に入っていった。

私も裏口から入っても良かったのだが…私まで入ってしまっては、それこそバレるかもしれない。
フブキは背が低くて、髪色もカモフラージュできるような色だけど…私はあまり背は低くないし、髪色だって、薄いピンクと薄い黄色だ。
ここまで来て、フブキを更に危険に晒す訳には行かないと、私は正面入口への道を一人で歩いていた。

──今思えば、この判断が間違っていたのかもしれない。
一体、ストーカーは誰だったのか…と、そればかり考えていた私には…背後からの気配など、気が付くことが出来なかった。

ｷｨｨｲｨ！と、甲高い音が鳴る。
その音を聞いて、ようやく後ろを見た私の目の前には、突っ込んでくる車が見えた。
突然の事で動けなくなり、目をキュッと瞑った。

「A！」

ドンッと衝撃が私の体を走る。
轢かれたのか…とも思ったが、どこも痛くない。
恐る恐る目を開けると、目の前に広がったのは……
ワイシャツ？

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