marionette doll【霧隠ラント】

8，最悪の再会 ページ11

先程、一員として認められた私は、YSPクラブのメンバー…いや、私のチームメイト達と、廊下を歩いていた。
学園案内をしてくれるそうだ。確かにこの学園内は広くて、今ここで1人にされたら、間違いなく迷う自信がある。
必要な教室が分からなかったらの困るだろう…と、地図に色々書き込みながら、説明をしてくれている。

その間には、色々みんなで話しながら歩いていて…
フブキちゃんの作った発明品の話なんかは、本当に凄かった。中学生の、それも女の子が作れる作品だとは思えないくらいに…完成度が高いというか、なんというか。
将来、かなり優秀な発明家になるんじゃないか…なんて思いながら廊下を歩いていると、向こうから集団が歩いてきた。

途端、先程と同じようなピリッとした空気になる。
……ということは、あれが生徒会…。
足並みを揃えて、誰一人乱れぬその歩き方は…まるで、彼自身の政治を表しているようだった。

──真ん中に歩くのは、毛先が少しクルっとした髪の美少年。…間違いない、ラント君だ。
性格とは違い、容姿はほとんど変わっていなかった。

私たちと、生徒会が廊下の真ん中で交差する。
すると、後ろを歩いていたサン太夫君･マタロウ君が
「こんにちは！」と挨拶をした。
その声に反応して、隣を歩くフブキちゃんも「こんにちは」と言ったので、とりあえず私も「こんにちは…」と挨拶をする。

みんな、生徒会長『霧隠ラント』の顔は見ていない。
というか、怖くて見れないのがサン太夫君とマタロウ君。興味が無いのがフブキちゃん。…いや、1番興味が無いのは、挨拶もしていなかったジンペイ君か。

当たり障りなく通れるかと思いきや…振り返ったラント君と、目が合った。
途端、その崩れぬ顔立ちは、驚いたようなものに変わった。…その反応から察するに、おそらくは私だと気が付いたのだろう。

生徒会が、足を止めた。

ジンペイ君は、そのまま無視して歩いていこうとしたようだが…残念ながら、生徒会長はそれを許してはくれなかった。

「…時に。」

静かな廊下に、その声が響く。
あの頃とは全く違う、低い声…だけど、昔の面影もある声だ。──悲しいことに、霧隠ラントで間違いないようだ。

「…君は、編入生か ？」

その問いかけが、私に向けられたものだと気が付くまでに、少々時間を要したが…自然とビシッと背筋が整い、敬礼のようなポーズで「はい！」と返事をしていた。

…なるほど……マタロウ君の言っていた、めちゃくちゃおっかない。の意味がわかった気がする。

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