ヒロインにはなれない (ページ35)

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「おい。A聞いてる？」

「ごめんごめん笑」

しっかりしてよ？笑、って目の前に座る檜山に呆れられた。

さっきまで黒ちゃんが座ってた横の空き席を見て、今頃黒ちゃんどうしてるかな？とか考えて集中することができない。

明日からテストだしちゃんと気持ち入れ替えよう。そう思った時横から視線を感じ、振り向くと不安そうな深田と目があった。

大丈夫だよそういう意味を込めてにっこって笑った。

あっという間に時間は過ぎて、帰る時間になった。

いつも電車で途中まで一緒だからうっちーと帰ってて、今日もそのつもりだったのに、

「A送るよ」

「明日テストだしほんとにいいよ笑」

「俺が送りたいから」

深田の言葉に甘えて送ってもらうことになった。

みんなと解散して深田の腰に捕まり自転車を走らせた。

「黒ちゃんとなんかあった？」

「もっとオブラートに包むとかないの？笑」

あ、ごめん、ってテンパる深田を見て、クスッと笑ってしまった。

「いいよ笑なんかあったよ」

「そっか、」

「何があったか聞かないの？」

「Aが話したかったら聞くよ。でも無理には聞かない笑」

「聞いてくれる、？」

いいよ、そう返事が来たから、さっきあったことを話した。

「前まではね、付き合ったらちゃんと諦めようって思ってたの。だけどやっぱ好きで、でも私のこの好きって気持ちは、人を傷つけるんだなって、」

「じゃあ、俺のこと利用してよ。」

「え、どういうこと？」

「Aが呼んだらすぐ駆けつけるし、悲しい時はそばにいるからさ、」

いつもより速い深田の心拍数と後ろ姿からもわかる真っ赤な耳。

「ありがと、でも深田にとってそれは、」

「Aのそばに入れるなら俺は嬉しいよ」

言われ慣れない王子様のような発言にドキッとした。