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「未練?そんな幽霊みたいな……」
「でもキヨくんに振られて泣いてたらこうしてタイムリープしてる訳やし」
「泣いてないけど」
しかしそう言われるとその考えは一理あるかもしれない。そうなると私が過去で果たす目的は
「清川くんに、もう一度告白して成功させたら元に戻れる?」
「かも」
香坂くんからは曖昧な返答が返ってきた。本当にそれで帰れるのか定かではないが、今は少しの希望にかけてみるしかない。
6時間目の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
「香坂くんって意外と授業とかサボるタイプなんだね」
「いや、別にサボってる訳じゃないよ」
「でも授業出てないじゃん」
そういうと香坂くんは「まあ」と濁した。
「それにしてもやっぱり未練を晴らさなきゃなのかな……」
「……あのさ」
香坂くんが真剣な表情に変わってこちらを見つめる。アーモンド型のくりっとした可愛らしい目と視線が交わる。胡桃色の鬱陶しい前髪が邪魔をする。切ればいいのに、なんて思った後に今はそんなことはどうでもいいか、と1人で解決した。
「元に戻れるように、協力する」
少しの間を置いて、香坂くんの口から出てきた言葉に少しだけ驚いた。香坂くんは元の時間に私が戻れなくとも何とも思わないんだろうな、と考えていたからだ。
「事情も全部聞いちゃったし、まあ見過ごすのもあれかなあ、って」
相変わらずぼんやりとした理由だが、清川くんの仲のいい友達に協力してもらえるのはありがたい事だ。それに、私だってもう一度チャンスがあるならそれを無駄にしたくはない。
「途中で投げ出さないでね」
「そんなことせんってば」
「ところで香坂くんって下の名前なんだっけ」
ズコーという音でも出すんじゃないかと思うくらいの勢いで香坂くんは転んだ。
「隣のクラスの人の名前くらいわかるやろ!ていうかキヨくん好きなら尚更!ていうかさっきも香なんとかくんとか言ってたし!」
「ごめんあんまり興味無くて……」
ため息をつきながらも香坂くんは下の名前をちゃんと教えてくれた。
「怜斗かあ、かっこいい名前だね」
「別に普通やない?」
「かっこいいと思うけどなあ。じゃあレトさんって呼ぶね」
「お好きにどうぞ」
こうして私はレトさんに元の時間に戻る協力をしてもらうことになったのだ。清川くんへの告白を成功させること。それで元に戻れるかは分からないが、今の私はとりあえずそれに賭けるしかなかった。
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蘭(プロフ) - ラテ。さん» コメントありがとうございます!素直な率直な感想でとても嬉しいです。更新ペースは遅いですが頑張りますのでこれからもよろしくお願い致します。 (2020年10月30日 20時) (レス) id: f5b8681d3b (このIDを非表示/違反報告)
ラテ。 - コメント失礼します。内容がとても面白くてめちゃめちゃ凄かったです。(小並感)次の更新楽しみにしてます。無理せず頑張ってください。 (2020年9月19日 13時) (レス) id: 719843bd51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘭 | 作成日時:2020年9月10日 3時