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「そろそろ安定した食糧が欲しくて彷徨ってたらここからいい匂いがして、Aの血吸ったら美味しかったから？」
食糧、という言葉に思わず体が反応する。また血を吸われるのか、と思い寒気がした。出来れば吸血はもう二度とされたくない。噛みつかれるのは痛いし、いくら傷を治せるとはいえ血が出るのも嫌だ。
「吸血されるのが痛くて嫌って言うなら心配しなくていいよ。麻酔効果の術くらい使えるし、傷はさっきみたいに治せばいい」
痛くないなら……って吸血鬼に上手いこと乗せられている。しかし手元で月明かりに照らされて光る鍵を見る。自分の命を左右するようなものを渡すということはそれなりに覚悟を決めているのだろう。自分はやはりお人好しな性格だ、と改めて実感した。
「……わかりました」
そういうと吸血鬼はぱあっと顔を輝かせて喜んでいた。こんな風に笑ったりするんだな、と少しドキッとした。
「あ、ていうか名前まだ教えてなかった。キヨって呼んでよ」
急に距離を詰めてくるので自然と一歩下がってしまう。
「き、キヨ……さん？」
「堅苦しい、敬語も要らない」
どうやらこの呼び方では気に喰わないらしい。
「じゃ、じゃあキヨくん」
そういうとキヨくんは頷いた。納得したということでいいだろう。
「じゃあ、俺のことを家に招き入れるように言ってくんない？」
「なんで？もう入ってるけど」
「吸血鬼はその家に住人に許可もらわないと基本入れないんだよ。俺みたいに入れるやつも稀にいるけど長くは持たないし」
吸血鬼も色々大変そうだ。とは言っても家に招き入れると言ってもなんて言えばいいのだろう。とりあえず適当にそれっぽく言ってみることにした。
「目の前の吸血鬼を、この家に入ることを許可します」
これで大丈夫なのかとちらりとキヨくんを見ると問題なさそうな感じだったので成功したということでいいのだろうか。
「別に入っていいよ、くらいでも入れたんだけど」
「そういうのは早く言ってください」
無駄に堅苦しくして恥ずかしくなってきた。そもそもそんな友達が来た時のノリでいいのか、ともツッコミたくもなった。
「まあこれで晴れてAの家に住めるようになったわけだし。よろしく」
キヨくんはそう言うと、顔をぐっと近づけてきた。赤い瞳に吸い込まれそうになったところで私の記憶は途絶えた。
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蘭(プロフ) - 鮫島さん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえてとても嬉しいです。更新が遅くて申し訳ありませんが、続きを待っていただけると幸いです。 (2020年3月22日 3時) (
レス) id: fe69aa8e2d (このIDを非表示/違反報告)
鮫島(プロフ) - とても私好みの小説で面白いです…！更新頑張ってください！ (2020年3月19日 0時) (レス) id: f96bdb592e (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - 巡さん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえて嬉しいです。更新頑張ります。 (2020年1月7日 18時) (レス) id: c4a54b0710 (このIDを非表示/違反報告)
巡(プロフ) - ものすごく素敵なお話ですね…！応援してます！頑張ってください！ (2020年1月6日 21時) (レス) id: c8ea001036 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭 | 作成日時：2020年1月4日 15時
