魔法みたいな/rt ページ31
思わず漫画かよ、とツッコミたくなった。下駄箱を開けてチョコが沢山落ちてくるなんて。
「……は？」
「は？は私のセリフです。は？」
下駄箱のネームプレートには「香坂」と記されている。紛れもなくそれは私の彼氏、香坂先輩の靴箱だ。可愛くラッピングされたチョコが足元には落ちている。それを先輩は一つ一つ拾い上げた。
去年はせいぜい3個くらいだったのに今年は雪崩が起きる程の量が入っている。3個でもそれなりに貰っていると私は思うが。
「こんなに食べ切れんよ……」
「いいじゃないですか、モテモテで」
「いやいやチョコの食べ過ぎで鼻血出るでしょ」
香坂先輩は元々影でひっそりモテるタイプだった。そんな先輩がなぜチョコレートが雪崩落ちる程モテるようになったのかは検討がついている。恐らくこの間の弓道の試合だ。その日はたまたま生徒も見学可能で、3年生のイケメンを見ようと女子達が大勢来ていたのだが今まで隠れていた先輩の良さが彼女達にも分かったらしい。それからは告白される回数が増えたり、遊びに誘われる回数が増えたりした。「彼女がいるから」と全部断っていることは知っている。
今日渡そうと思っていた先輩へのチョコは鞄の中に入ったままだ。少し歪なチョコクッキーなんてこんなに綺麗なチョコの中では埋もれてしまう。
情緒不安定なのか、少しだけ涙が出た。我ながらめんどくさい女だ。ずっ、と鼻をすすると、先輩はそれに反応した。
「えっ、A？もしかして泣いてるん？」
「違います。ちょっと鼻詰まりなだけです。先輩の華声には叶わないですけど」
「華声って……ねえ、チョコ、ないの？」
首をこてんと傾けてこちらを見つめてきた。
「もう先輩いっぱいあるじゃないですか」
「俺はAのチョコが欲しい」
「そんなに綺麗じゃないですけど」
先輩は私の頬に手を添えて、視線が合うようにした。
「彼女からのチョコが欲しくない男なんておらんよ」
そう言いながら冷えた親指で私の涙を拭う。泣いたのもバレている。先輩はなんでもお見通しだ。
「……どうぞ」
私はチョコクッキーを差し出した。もっと可愛いあげ方を勉強したはずなのに、何一つ可愛くない。
「ん、ありがとう。Aは可愛い女の子だよ」
そう言いながら私の頭をポンポン、と撫でた。結局は先輩の「可愛い」という言葉だけで機嫌なんて治ってしまう。
魔法をかけられるみたいに。
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蘭(プロフ) - なめこさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです。これからもキュンキュンするお話頑張って書きます！ (2020年1月8日 6時) (
レス) id: c4a54b0710 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ - めっちゃキュンキュンしました！ (2020年1月7日 21時) (レス) id: 136e05d453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭 | 作成日時：2019年11月30日 10時
