君に聞きたいこと/ky ページ17
私はいつも放課後になると誰よりも早く教室を出る。部活に入ってるわけでもなく、委員会があったり帰宅するというわけでもない。それなら何処へ向かうのか、と皆口を揃えて言うだろう。
空き教室のドアを開け、たくさんの机が後ろに無造作に積まれた中、唯一座れる状態の机と椅子に着席して荷物を置き、本を取り出す。そして下校時間ギリギリまで本を読む。これが私の放課後の日課だ。本なんて家で読めばいい、と言われるかもしれないが、家だと弟がうるさくてまともに読むことが出来ない。ここの空き教室は誰も使うことがないし、校庭のサッカー部や野球部の声とそよ風が心地よくて時間が経つのもあっという間だ。しおりの挟まったページを開いて、読み進めようとした所で手が止まった。
「やっぱりここにいた」
そう呟いた襟足の赤い彼は、ドアを開けてこちらに向かってきた。うちの学校の校則は緩く、髪染めやピアスは基本的にOKな為、派手な生徒が多い。ここではむしろ私みたいな地味な生徒の方が目立つくらいだ。彼は茶髪で襟足だけ赤く染めている。
「……どうかしましたか。清川くん」
「キヨでいいよって何回も言ってんのに」
清川くんのことを大体の人が「キヨ」というあだ名で呼ぶことは知っている。だがそんなに親しい間柄でもないのにあだ名で呼ぶなんてことは私には出来ない。清川くんとの接点なんて委員会が最近同じになった事くらいだ。
「Aさんと今日も話そうと思って」
「私と話しても何も無いですよ」
私の本を読むという日課は清川くんのせいでここ最近出来ていない。ここの空き教室は誰も使わないのによく見つけたなと思う。
「俺が話したいからいいの」
「はあ……今日は何のお話ですか?」
「んー今日はいろいろ質問したいな」
清川くんはそう言うと机に頬杖をついた。上から見上げてこられると目の逸らしようがない。
「常識の範囲内でお願いします」
「分かってるよ!さすがにスリーサイズとか聞かないって!」
清川くんなら冗談だとしても聞きかねない気がして少し疑いの眼差しを向けた。
「じゃあえっと、誕生日は?」
「10月21日です」
「10月って来月じゃん!じゃあ血液型!」
「A型です」
「そんな感じする。好きな食べ物は?」
「チョコレート、とか」
「女の子らしいね。俺は綾鷹が好き」
それは飲み物では?と思ったが聞き返さないことにした。こうして清川くんから怒涛の質問をしばらくされた。
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蘭(プロフ) - なめこさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです。これからもキュンキュンするお話頑張って書きます! (2020年1月8日 6時) (レス) id: c4a54b0710 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ - めっちゃキュンキュンしました! (2020年1月7日 21時) (レス) id: 136e05d453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘭 | 作成日時:2019年11月30日 10時