どうせ落ちるなら/rt ページ15
「じゃあ俺のことを好きになればいい」
「は……」
「俺のことを好きになってよ。それでもAさんは、俺のことを残して死ぬの?」
「……冗談なんて面白くないんだけど」
「本気だよ、俺」
香坂君は私の顔を掴んで目を合わせてきた。その真っ直ぐな瞳からは不思議と目が離せなかった。少しして見惚れていたことに気づいた。
「今日初めて会話を交わした人に告白なんて、見た目に反して誠実さに欠けているのね」
「Aさんからしたらそう見えるんかな。これでもずっとAさんのこと見てきたんだけど」
見てきた……?関わりなんて一切なかったはずなのに何を言っているのか分からない。
「その顔やと多分気付いてないよね。好きだ、ってこと」
頭が回っていないが、はっきりとその「好き」という言葉は私の中にすとんと落ちてきた。
「好き……だなんて言われても、今まで話したことすらないのに、私のどこを」
「そうなるよね。一年の時に、図書室の並べられていた本に誰かがぶつかって落ちちゃったのを自分がやったわけでもないのに直してるAさんを見ちゃって最初は優しい子だな、くらいやったのに気づけば探してたし、視線がAさんから離れなくなってた」
「そんなの、当たり前のことだし。本当はもしかしたら私、最低な女かもしれないじゃない……」
「そういうことを当たり前のこと、って言うAさんが悪い女の子には俺は思えないんやけど?そんなAさんが、俺は好き」
ふわりと笑いながらそう言う彼を見ると、胸が高鳴った気がした。ずるい。これじゃあまるで
「好きな女の子が飛び降りようとしてるの見て、止めない男なんておらへんよ。もうしてほしくないし。でもどうせ死ぬなら、最後に俺のお願い聞いてよ。俺を好きになって、隣にいてほしい。」
そんなの死ぬなと言っているも同然じゃないか。その顔で見つめられたら死にたい、なんて言えなくなる。
「でも、私香坂君のこと何も知らないのに好きになるとか……」
「これからたくさん知っていけばええんやない?」
明日はどこで飛び降りよう、なんて数分前まで考えていたはずなのに香坂君のせいで予定が狂ってしまった。
「……わかった。言ったからにはちゃんと落としてみせてよね、香坂君」
「言われなくても」
死ぬのはやめた。どうせ落ちるなら、屋上からよりこの恋に落ちた方が楽しそうだから。
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蘭(プロフ) - なめこさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです。これからもキュンキュンするお話頑張って書きます! (2020年1月8日 6時) (レス) id: c4a54b0710 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ - めっちゃキュンキュンしました! (2020年1月7日 21時) (レス) id: 136e05d453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘭 | 作成日時:2019年11月30日 10時