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キスシーンを飾る/ky ページ11

今日は卒業式だ。と言っても私はまだ二年生なので主役は三年生の先輩達だ。

三年生の知り合いは部の先輩くらいだ。私はサッカー部のマネージャーをやっている。サッカー部は人数が多いのだが、一番に覚えたのは清川先輩だったなと思い出す。サッカーが上手いにも関わらず、キャプテンじゃなかったのはキャプテンの話を自ら断ったらしい。先輩らしいと言えばそうかもしれない。

そんな先輩を気づけば私は、この二年間で好きになっていた。

ぼんやりとしていると、卒業式はもう終盤に差し掛かっていた。卒業式というのは在校生からすると割と退屈なものじゃないんだろうか。みんな上の空だった。


「卒業生、退場」


先生がそういうと、全員が立ち上がり、拍手で次々と退場していく先輩達を見届けた。背の高い私は、後ろから先輩達を見届けた。清川先輩は涙一つ流しておらず、相変わらずだなあ、なんて思っていると全ての卒業生が退場し、卒業式は幕を閉じた。

私にはこれからやらなければいけないことがある。一つは、清川先輩に部からのプレゼントとして、花束を渡す事。花束は一人一つあるのだが、流石に全員で回るのは大変なので、一人が一人の先輩に、という形になった。清川先輩の担当を私にしてくれた同じマネージャーの友達には感謝しかない。

もう一つは私個人のことだ。それは先輩に想いを伝えること。流石に今から告白するとなると緊張してきた。先輩に会わないことには何も始まらないので先輩を探すことにした。


「おかしい……」


先輩が見つからない。なので何人か部員に聞いてみると北校舎裏に向かうのを見た、という目撃情報を聞いたので向かうことにした。

北校舎裏に行くと聞いた通り、先輩の姿が見えた。


「せんぱ__」


声をかけようとしたが、先輩と誰か女子がいるのが見えた。可愛い人だ、恐らく彼女も三年生だろう。流石に話し中に声をかけるのは良くないと思い、そっと影から話し終わるのを見守ることにした。

だがこの時話しかけた方が良かったのかもしれない、なんて思う頃にはもう遅くて。

清川先輩と可愛い女子の先輩は、唇を重ねた。

黙って見ることしか出来なかった。少しずつ状況を理解し始めた私は気づけば涙を流していた。背伸びして先輩と重なる可愛いあの子が羨ましくて。


「背伸びしなくても、私ならキスできるのに」


どうしようもない感情をぶつけて、振りかざした花束からは花びらが舞い、皮肉にも二人のキスシーンを飾る小道具と化した。

アダムの林檎にキスを/uszw→←特別な日だから/rt



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(プロフ) - なめこさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです。これからもキュンキュンするお話頑張って書きます! (2020年1月8日 6時) (レス) id: c4a54b0710 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ - めっちゃキュンキュンしました! (2020年1月7日 21時) (レス) id: 136e05d453 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年11月30日 10時

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