紅一点、君は百点、僕らは満点 ３

F.I ページ30

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俺の幼なじみはダンスが上手い。

アクロバットも上手いし
ＤＪとかもできて

周りを明るくして楽しませられるヤツ。


でもわざわざエゴサしてへこみにいく
そんな弱いメンタルも兼ね備えていて


器用で、面倒見もよくて、なんでもできて、
でも人一倍気にしがちなところもある。





良いところも悪いところも
昔から知っている。




「さ、壱馬さんの手も堪能しましたので
Aと１つてぃっくとんとんしますかー」


「ねえねえ翔平、とんとんで作れるの？」


「トントン〜うひょっひょっ」


「やだやだその繰り返しぃ」



おどける翔平にAも笑いだして
２人で動画の素材を探し始めた。

慎はAの隣に座る。



「慎くんもトントンする？」

「しませんよ…トントンって何ですか」

「トントンって、なんだろ？翔平」

「えーわかりませんなー」

Aは嬉しそうに笑って翔平の肩にもたれかかる。



「Aさん、翔平さんは忙しいんで
こっちにもたれてください」

「大丈夫。Aくらい平気だから」


翔平は真剣な顔をして慎に言うが
直ぐにハッとして





「ま、でもちょっと携帯見にくいから
A、まこつに構ってもらいなぁ」


「わかった！終わるの待ってるね」


言い換えた翔平の一瞬の顔の違いなんて
幼なじみの俺にしかきっとわからない。

誰も気づいてない。





「翔平〜まだ〜？」

五分も経たずに翔平の腕に頭を擦り付けるA





「まーだ。もう少し待ってて」




どうして今日まで何も気づかなかったのか


今思えば、気づくきっかけはあった。




フェスのあと迷子になって
バンドマンに囲まれるAを見つけて


俺より先に走って

Aの手を引っ張って

バンドマンと対峙したのは他の誰でもない




「しょーへーしょーへーしょーへー」

「サイレンの音で呼ばない」

「早くして待てない翔平早く遊ぼ！」



「うちのお姫様はわがままですなー」


翔平だったのに。





「樹くんもこっち座る？」


「ううん、俺はいい」




気づきたくなかったのかもしれない。



翔平がAを好きだなんて
一度も考えたことなかった




今思えば当たり前に気づくことなのに。





「Aの誘いを断るとは…」

「いいのいいの。それより翔平できた？」



それより、って。俺はついでかよ。




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