紅一点、君は百点、僕らは満点 ３

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「樹くん」

「ん？」

「…樹くんはかっこいいよね」



「急になに」

思わず笑ってしまうのは脈絡の無さからか
下がった体温が上がってきたからだろうか。




「あのね樹くん…」

「なに？」

神妙な面持ちになるA




「私……」

「うん」



もう何を言われても驚かない。





「HIROさんに呼ばれてたの思い出した…！」

「・・・早く行け！バカ！」

「いま思い出したの！バカって言わないで！」


どう考えてもバカ以外浮かばない。
なんてバカなんだ。



昨夜あんなに心配させたやつとは思えない…

なんでこんなにいつも通り呑気なんだよ…。



昨日なんてなかったみたいに普通で
どんなに心配したかきっとわかってない。



いつもジェネさんとAが飲みにいくと
だいたい朝まで帰ってこれない

それは毎度のことだけど


連絡もできないくらい楽しかった？

って聞きたかったりもする。



聞きたいことがこうやって増えて
聞けなかったことも同時に増えていく。

最近そうやってAが遠くにいってて
どんどん好きになるのが怖くなる。




「樹、A知らない？」

「…知りません」

壱馬さんに聞かれると素直に答えたくない。



この人は前にもAの首を噛んでるし
今回はキス。

絶対に素直に教えたりしない。



「じゃあ待とうかな」

「帰りました」

「ほんまに？」


「はい」

思いっきり嘘だ。
でも嘘くらいつかないと
この人はここから去ってくれない。



「…嘘やろうけど帰るわ」

「…お疲れ様でした」


バレバレ…


壱馬さんくらい顔も整っていて
オーラとか、カリスマ性があるような人が

わざわざAを狙わなくてもいいのに。


選り取りみどりのくせにって思ってしまう。




「はあぁ…」



例えば、


壱馬さんのようにあっさりキスでもできたら

ジェネさんのように朝まで一緒にいれたら


陸さんのようにいい人の皮を被っていれたら

慎や翔平のようにもっと近くになれたら



きっとそれでは満足できなくて
もっとその先のことまでしたくなる。


その時、キスくらいじゃ満足できない。




そんな気持ちを昇華させるのは
ダンスしかなくて一心不乱に踊ってしまう。




「あ・・」


「…やっと戻ってきた、バカ」


「あー、またバカって！！」




バカって言わないともう我慢できそうにない





名前を呼んで目を合わせてしまえば



キスなんて

いつだってできてしまいそうで



正直、怖いんだ。



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