紅一点、君は百点、僕らは満点

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「そうだねー」

Aさんには大きい上着の袖口の輪っかで口を隠す。

少し雨が降る方を見てから、こちらを見て笑顔を浮かべた。




「慎くんがここで雨が止むのを待とうって言うなら一緒に待つかな」


１人で雨に打たれるのは嫌だし
風邪もひきたくないし

とりあえずどこでも慎くんといたら
１人じゃなくて２人だから寂しくないしね



そう続けて優しく笑いその場にしゃがむAさんはこちらを見上げる。


「慎くんはどうするの？」




「Aさんから離れないだけですよ」





仮に、この街に２人になっても

雨が一生降り続けても


この人のそばを離れない。



「そっか、じゃあ私は絶対寂しくならないね」

「寂しくなんてさせませんよ」

小さな体をこちらに向かせて小さな手を握る。



「絶対に離しません」





あの夜、優しい顔で兄のように振る舞う人が


眠るこの人の耳に『好きだよ』と囁き

この小さな手を握って眠りについた。



離さないと言わんばかりに強く握られた手。



みんな気持ちにセーブをかけて
早々に諦めたくせに

この人を自分のものだと言いたがる。



そこにどんな理由があっても

この人をずっと隣で見ていて
ずっと好きなのは俺だけ。



仕方がない、仕方がないと
もっともらしい理由にもならない言い訳を
この人を前にしてする人たちなんかに

盗られてたまるか。



「慎くん？」

「……好きです、Aさん」



誰よりもあなたに似合う服を選びたいし
誰よりもあなたを知りたいし

誰よりもあなたの隣にいたくて

誰よりもあなたを好きだから




こんな状況で想いを告げる僕を許してください。



誰にも盗られたくなくて仕方ないから…






あなたのために傘を持って迎えに来た人に
今はどうか、気づかないで…




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