紅一点、君は百点、僕らは満点

H.M ページ6

、



おかしい。

僕たちの紅一点がおかしい。


様子がおかしい。



「Aさん」

「なっ、なに！？」


久しぶりのオフ。
二人で買い物に来たけれど、ずっとそわそわしている。


「なんかありました？」

「えっ！？なにが！？」

「いや、こないだのリハから最近ずっとそわそわしているというか」

「きっ、気のせい気のせいだぬ」

「だぬ？もうそれは気にしろってことですよ」


服を見ながらAさんを見ると目を泳がせている。



「あ、これ可愛いです！慎くんに似合うです！はい試着してきてください！」

服を渡され無理やり試着室に押し込まれた。



「Aさーん、なんで無理やり押し込むんですか」

「いっ、いいから！いいから！早く着て！」


大人しく着るしかないか、と思いながら選んでもらったシャツに腕を通す。



好きなデザイン、シルエット、カラー。


いつからこんなにも好みを知られているのか自分でも不思議に思う。

誰と買い物に来てもこんなに100%好きなものを選んでくれることはない。

しかもこれを選んでくれているのがまさか女の人だなんて、少しくすぐったい。


試着室のカーテンを開けるとこれを選んでくれた女の人は、店内でメンズの服を一生懸命に見ていてそれを自分が着るのだと思うとまた違う気持ちを感じる。

優越感、だろうか。



「Aさん、着ましたよ」

「あっ、やっぱり似合う！絶対に白より黒だと思ったの」

「ありがとうございます」

「そのシャツにこのアウター良くない？」

「あっ、それさっき見てたんです」

やっぱり自分の好みを知られている。



「合わせよ合わせよ！絶対に慎くんに似合うから！」

鏡の前に押されてアウターを肩に掛けられる。


「うん、似合う！私はこの組み合わせ好きだなー」

「はい、僕もこれ好きです」

「やったー！私もこのアウター買っていい？おそろいしようよ！」


屈託のない笑顔が眩しくて、微笑ましくて、

自分より年が上だなんて思わないくらい、



可愛らしい。






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