100 ページ17
白「結局、歩いちゃったね」
恵の言葉に、相槌を打ちながらたどり着いたのは、夜明け前のヘリポートだ。
薄暗い空間に浮かび上がる、まだカバーの付いたヘリを、耕作と共に眺める。
彼は、目を細める────別れを惜しむように。
すると、背後から「あれ、お前らどうしたんだよ」と聞きなれた声が耳に届く。
振り返ると、病院から出てきた藤川とはるかだった。
白「夜勤お疲れ様。こんな時間になっちゃったし、このままカンファレンスの準備しようかなって」
藤「お前ら本当病院好きだね」
呆れたようにいう藤川に、笑いながら“あんたも相当ね”と返す。
いつまでも、十年たっても変わらない、私たちの心の奥底に潜む気持ち。
冴「────藍沢先生、確か今日、トロントに出発じゃ？」
はるかがふとそう聞けば、耕作は、頷いた。
藍「ああ。朝のうちに」
冴「あわただしいわね」
寂しさを押し殺すようにそう言ったはるかに、美帆子が返す。
緋「でも、楽しみ」
きっと、その“楽しみ”にはたくさんの想いが込められている。
藤「外人相手だからってビビるなよ？」
さびしさを胸に閉じ込めた藤川の茶化しの言葉だった。
白「絹江さんが知ったら喜んでくれたのにね」
恵は、耕作の亡き祖母に思いを馳せた。
────耕作は、私たちのチームでの誇りでもある。
藍「……そうだな」
彼は、遠くを見つめたままそう呟いた。
藍「でも、十分だ。
────お前たちが知ってれば、それで十分だ」
耕作が向けた視線の先には、ドクターヘリがあった。
藍「出逢って十年。一日のほとんどをお前たちと病院で過ごした。
時間で考えたら、もう誰よりも長く一緒にいる」
のぼりはじめた太陽が、私たちとヘリを照らした。
藍「────────お前たちが家族みたいなもんだ」
そう呟いた耕作に、六人で笑い合う。
────家族。
その言葉は、妙にしっくりと心にはまる。
いつだって、この仲間と共に歩いてきた。
これからは別々の道────でも、私たちなら、乗り越えられるから。
命の大切さを、この十年で学んだ。
大好きな仲間が出来た。
愛するひとと今一緒にいられる嬉しさを感じた。
『────────耕作、恵、美帆子、はるか、藤川。
ありがとう』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1152人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らむれもん - ちーさん» たくさんコメントありがとうございます（＞＜）本当に感謝です〜〜！！ (2019年3月10日 11時) (
レス) id: e372e1ae53 (このIDを非表示/違反報告)
ちー(プロフ) - こちらこそ拝見させていただきます！よろしくお願いします( ´∀｀) (2019年3月10日 0時) (レス) id: cd2b62e1d4 (このIDを非表示/違反報告)
らむれもん - ちーさん» ありがとうございます！いろいろな意味で！続編もぜひ見て頂けると嬉しいです(^^*)これからもよろしくお願いします！！ (2019年3月9日 21時) (レス) id: e372e1ae53 (このIDを非表示/違反報告)
ちー(プロフ) - 謝らないでください！SNSは色々あるので大変ですから、、 お話変わりますが、完結おめでとうございます！そしてお疲れさまでした！ (2019年3月6日 21時) (レス) id: cd2b62e1d4 (このIDを非表示/違反報告)
らむれもん - ちーさん» すみません…(´;ω;｀)現在やるか検討中です(笑)せっかく同じ好みの方がいらっしゃったのに、残念です… (2019年3月3日 10時) (レス) id: e372e1ae53 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らむれもん | 作成日時：2019年1月1日 22時
