秘密の過去 ページ10
「おはようございます。今朝のニュースですが、まずはこちらです。えー、二瀬 晶氏が＿＿を所持していたことが判明しました、こちらに関して、二瀬氏は＿＿＿」
『おかあ、さん？』
桜が咲き乱れ、散り始めて、赤いレンガの道がピンクとのマーブルに彩られている頃。ウキウキで中学二年の新学期を始めよう、という時期だった。
でも。
＿＿私の青春は、さくらと共に散り散りに引き裂かれてしまった。
『おはよう、！』
「二瀬ちゃん、ニュース…あれって、」
「二瀬…あれってマジ？」
「え、嘘、怖っ」
それ以来、友達なんて出来たことがない。
…たった1人の男の子を除き。
「A、大丈夫か…？」
『…司。私が大丈夫に見える？！』
「…そうだな、ゆっくり休＿」
『もうこれ以上関わらないで！！！』
「…！」
たった一つの絆も、自らの手で絶ってしまった。
それでも、数ヶ月。彼は根気よく話しかけてくれた。
「おはよう！調子は」
『…』
「A！カフェに行か」
『…』
「…A、オレ、絶対にお前を笑顔にする」
『…そか、ありがと』
そう返すのが精一杯だった。その日から、少しづつではあるけれど、まともに司と会話出来るようになった。
やっと、司の付き添いもあり、母親とも面会しに行けた。
『…お母さん』
「A…ごめん、ごめん…っ」
『…！』
知っていた。この言葉が偽りだと。この涙も全て嘘だと。知っていた。この目の前の女性は、私を愛してはくれないのだと。
それでも、私は。フッ、と笑って
『…ううん、しっかり償ってね、じゃあ』
恨んでも恨みきれない母親を、許すことが出来た。
『司』
「…あれで、良かったのか」
それは司も感じていたようで。
『うん、ありがとう。これで、やっと笑える日が来るのかもしれない』
「そうか」
それ以来、司とはなお交流が深まった。勿論、恋人のような関係、とまでは行かないが。
また、事件は起きた。
夏の暑い日、司に夏祭りに行こうと誘われた。私は快く承諾した。
午後6時。インターホンが鳴り、司かと思って開けた。
＿＿あの時、一瞬でも迷っていれば。
喉元にナイフを突き立てられ、「二瀬晶は」、そう告げられた。
刑務所だ、迷いなくそう答えた。俺はお前の母親の不倫相手だ、と。そう言われた。目眩がした。
他にも、数人相手がいたらしい。
男は立ち去った。数分後、青い顔をした司は私に問いつめた。どういうことだと。
そこから、少しづつ歯車が狂い始めた。
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作者名：ｆ. | 作成日時：2022年2月6日 17時
