【番外編】錬金術師はロマンチスト ページ13
本日、2月14日。世間一般の人達はチョコレートを渡してイチャコラするという、とんでもない一日。
バレンタインである。
「か、神代先輩っ、これ…！」
「天馬先輩、！」
「きゃ、渡しちゃったよ！！！」
…ご覧の通り、司と神代先輩の周りは女子でごったがえしており、なんとも言えない気持ちになって素通りする。
ここまでは良かった。ここまでは。
「あ、二瀬くんじゃないか！」
「おお、Aか？！」
………こいつら。
『ゲッ』
いっせいに周りの女子の痛い視線をあびる。わかる。分かるよ。「なんで禁忌のお前が名前呼ばれてんだよ」って思ってるんですよね。
それを知っている私はただひたすら廊下を走った。恐怖。
『はー、疲れた…ってうわっ？！』
近くのベンチに座っていると、首筋に冷たい感触。
反射的に手の先を見上げると、そこには今では見なれた蜂蜜色の瞳が。首筋の冷たいものの正体は、先輩の大きくて白い手だった。
「いやあ、あまり人混みは好きじゃなくてねえ。あ、でも僕たちのショーを見てくれる人は別だけれどね」
と先輩は優しく微笑む。
ああ、そうだと何かを思い出したらしく、ポケットを漁り出す先輩。
「これを」
そう言って差し出されたのは、透明な袋に入った、薄い赤のマカロンだった。
『…！』
「ふふ、逆バレンタインも悪くないだろう？」
『…ありがとうございます』
お礼を告げると、先輩は満足そうに笑って、どこかへと行ってしまった。
晴れ渡った青空の元で、たったひとりベンチに腰かけて顔を赤くする少女がいたとか居ないとか。
＿＿＿
類「バレンタインのマカロンの意味。「あなたは特別な人」だそうだよ」
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作者名：ｆ. | 作成日時：2022年2月6日 17時
