神代先輩に落とされた(物理) (ページ2)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:25,883 hit

独りぼっちページ2

You side

蒸し暑い梅雨時のある日。珍しく晴れた屋上で昼食を食べるでもなく何となくスマホを弄っていた時だった。

「やあ、どうして君はここにいるんだい？」

落ち着いていて優しげなトーンの声が頭上から聞こえた。

反射的に振り返ってしまったが、慌ててスマホに目線を戻す。

「ふふ、無視とはいい度胸だね。君は1年生だろう？先輩に対する態度を改めたらどうだい？」

めげない。なんとも粘着質な先輩だ。
これまで私に興味を示したものは、必ずいつか離れていった。仮に、ずっと一緒にいてくれても、禁忌の私と居れば好奇の目に晒されるのは当然。

だから、自ら突き放す。それが妥当だと思っていた。

『…先輩でしたか。見ない顔だったので、不審者かと』

これは八割本音だった。不審者は嘘だけど、見たことの無い顔だったのは確かだ。

「君、名前は？」

質問攻めだな。しつこい。どんなメンタルなんだろうか。

『ナンパですか？趣味悪いですね。人に名前聞く時は最初に名乗る。常識でしょう？』

こういう理屈屁理屈はお手の物。暴動煽動だっておちゃのこさいさい。まあ、やらないけど。

彼は神代類と言った。確か、変人ワンツーフィニッシュと謳われる2人組の、片割れだと聞いた気がする。

私はこれ以上質問されたらと思い、屋上を後にした。

♪…………………♪

『…はあ』

絶え間なくこぼれる溜息にさらに溜息を吐きたくなった。

「あ、二瀬…さん」

かなり怯えた表情の女の子。たしか…草薙さん、だっけ

『ん、何』

「青柳くんが…呼んでた」

そう言って青い顔をして走り去って言った。ああ、本当に私は独りなんだな、とつくづく思い知らされる。

ボーッと廊下を歩いていると、青柳くんは私に気づいたらしく、小さく手を挙げた。

『で、要件は？図書委員？』

私の所属委員会は図書。クラスで2人選出されるらしく、半強制でやらされた。

「嗚呼。本棚の整理を放課後30分ほどだそうだ、図書室に行ってから棚は振り分けるらしい」

『ん』

すると、誰かが彼を呼ぶ声が聞こえた。私はこれ以上会話をするのを避けるため、教室へ戻った。
人間が怖い。嫌い。そう思うようになったのはいつからだろうか。

私は机の上にスケッチブックを並べ、残り少ない時間の昼休みを得意の絵を描いて過ごした。

独りぼっちなんて、慣れっこだから。