39 ぐちゃぐちゃで ページ39
「そ、そうだ焦凍元気なさそうだけど大丈夫…？ちゃんとご飯食べた？」
「ああ、食べた」
「そう…」
「緑谷に、俺の家のことを話したんだ」
「そっか…」
焦凍の顔は酷く悲しそうに、辛そうに見えた。
でも自分に出来ることなんて無いのがとても歯がゆい。
「俺は今、自分が何をしたいのかよく分からない…頭の中がぐちゃぐちゃで…」
「焦凍……えっ…」
何が起こったのか理解出来なかった。
気が付くと私は壁に背を付け、見上げた目と鼻の先には焦凍の顔がある。
「焦凍……？誰かに見られるよ…」
「お前は俺のお母さんに雰囲気が似ている」
「え…？」
「だからお前を見ていると消えてしまいそうでずっと隣にいてやらなきゃいけない気がしてならねえ」
焦凍は苦しそうな表情になる。
そして右手は壁に手を付いたまま、左手で私の耳あたりの髪をかきあげた。
私は焦凍の綺麗な両目を見るので精一杯で何も考える事が出来ない。
「お前もいつかは俺の前からいなくなるんじゃないかって…」
焦凍は瞼に涙を滲ませうつむいた。
すると彼の涙が1つ2つと床に落ちていく。
焦凍の滅多に見せない涙は正に今までの計り知れない悲しみや苦しみが器から溢れてしまったように見えて居た堪れない気持ちになる。
「大丈夫だよ、いなくなったりしないよ」
私はゆっくりと焦凍の頬に手を当て涙を人差し指でぬぐった。
そして焦凍の胸に顔をうずませ、動かせずにいた手を焦凍の背中にまわし、呼吸も出来ないほど強く抱き締めた。
「………」
すると焦凍も何も言わずに壁についていた手を私の背中にまわした。
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作者名：薫 | 作成日時：2020年8月12日 1時
