The Boy Born With Everything【轟焦凍】 (ページ20)

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逃げ場の無い私に容赦なく近付いてくる形の良い唇。

『私と焦凍はただの幼馴染。』

家に来る前に自分で発した呟きが脳裏に浮かんだ。

「ちょ、ちょっとストップ！」

咄嗟に自分の手の平で焦凍の口を抑える。

「今日の焦凍、なんかヘンだよ…。熱のせいかもしれないけど、でもこういうのってちゃんと好きな人とするべき、だと思うよ。」

そう言うと焦凍は予想外にも悔しそうな表情を浮かべた。

「俺はAが好きだ…。」

「えっと…」

自分の耳を疑った。

「ごめん、焦凍のことずっと幼馴染としてしか見てなかったからそういうの、よく分からない…。」

「……悪ぃ、先走っちまった。もう帰って良いぞ」

そう言うと焦凍は私の上から上体を起こし、布団に戻っていった。

どこまでもマイペースな男だ。

「全然、大丈夫だよ、お大事にね…。」

そう言い残すと轟家を後にした。