【WT】婚約者が最強なんて聞いてない【nkm】

31話 ページ31

しばらく待っていれば、ジェンティー王国軍はかなり減った。


残っているのは、多分…私が国の上に立つことで権力を失うかもしれないっていう、そんな立場の人たち。

つまり、だいぶ減ったとはいえ、残っている人たちはかなり実力があって、上の方の立場にいる人。厄介な人であればあるほど、この場にまだいる。


情報によると、司令官も当然残っているらしい。彼が今、私に従いたくない人たちの実質的なトップ。




「…行こうか」




なかむが立ち上がる。

なかむと幹部と、それからスパイさんたち。みんなで外に出て、宙に浮かぶ。



さっきスマイルが繋げてくれた通信機器から、司令官らしき人の嘲るような声がした。



"「これはこれは、A王女。自らの出陣ですか？」"


『…いえ。合図を出さないと、お互いいつ始めていいか分からないでしょう』



精一杯、胸を張る。

弱さを見せちゃダメだ。



"「…そちらの軍は既に撤退したようですが」"


『…彼らにはもう、これ以上傷ついてほしくなかったので。ジェンティー王国相手に苦戦しながらも、ずっと健闘し続けてくれた』


"「これはみくびられたものだ」"



かなり減ったとはいえ、母数が多かったから残っている人は相当数いる。それに二人だけで対抗しようとしているのだから、正直不安はあるけれど…でも、二人が私たちは大丈夫だと言ってくれるから。



信じる。




『そちらの合図でどうぞ』



そう告げたのち、今はかなり上空にいるのでスパイさんたちを降ろそうとする。

と、止められた。



「このまま、離して大丈夫。ここからの方が、向こうが最初にどう向かってくるか、把握しやすいので」


『け、怪我しちゃう、』


「平気です」


スパイさんとゾムさんは、かなり下の敵を観察している。


「昨日のうちにどんな魔法があるかもきいたから、魔法の攻撃も多分対処できるはずやし」


どうやらスパイさん、昨日得た情報を抜かりなく伝達済み。どこまでも、有能だ。


通信機器から声が響く。


"「それでは…」"


私は心配が拭いきれないまま、二人を離す準備をする。



"「__始めましょう」"




合図と共に軍が動き出して、同時に私は二人を離す。



二人は風を切って落ちていく。

彼らの前に揃って着地するなり、目視しにくいほどの速度で敵の駆け抜ける。



『…凄い』




舞うように敵を殺していく姿は、不謹慎だけど、美しかった。




　

　

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