15話 ページ15
帰りの馬車の中で、ふと、なかむが口を開く。
「ねぇ、へーべー?って何?」
『青春の女神。元の意味は、若さとか』
「…?なんでそんな女神様の名前で呼ばれてるの…?」
なかむはゆっくり首を傾げた。
『私もヘーベーって呼び名はさっき初めてきいたけど…』
私の特殊な力について話そうとしたとき、ちょうど白尾国の城に着いた。
『…思い当たる節はある。談話室に着いたら、話すね』
馬車から降りて、帰ってこれたことにほっとする。
そんな感情が顔に出ていたのか、なかむが暖かい笑顔で私の手を取る。
「おかえり」
『…!ただいま!』
談話室に着いてみんなが席に着いたので、私は口を開く。
『親が私に執着してた理由が、やっと分かった。…私のそばにいると、若さが保たれるみたいで、それが目的』
「…若さが保たれる??」
ぽかんと口を開けるぶるーく。
『うん。だから、自分たちから私が離れられないように…一人で生きていけないように、勉強も、魔法の使用もさせなかった』
静まり返る。
やがてきんときが、おずおずと、
「若さが保たれるっていうのは…つまり、俺たちもAがここにいる限り…?」
『詳しいことは分からないし、いつかこの力が消える可能性もある。けど…おそらく、』
少し躊躇ってから、口に出す。
『不死…ってことだと、思う』
正直、どんなふうな反応をされるかちょっぴり怖かった。
みんなの顔色を伺う。と…
なかむがぱぁっと顔を輝かせた。
「凄い!え、凄いよ!俺Aとみんなと、ずっと一緒に居られるってことだよね⁉︎」
『…んと…飽きない?』
「飽きない!」
即答される。
随分と簡単に言ってくれるなぁ、と思わず笑みが溢れる。
こんなに素敵な人に、見つけてもらえたなんて。
本当に、私は幸せものだ。
「よし、とにかく…ジェンティー王国とどうなるかは分からないけど、俺はAを手放す気はない」
なかむは私の手を恭しく取ってみせて、その大人びた動きと裏腹に屈託のない笑顔を浮かべる。
「絶対俺が守るからね」
『…っふふ、ありがとう』
愛情を与えられてばかりで、私も何か返したくて、そっと手を握り返す。
そっとその手の甲にキスを落とした。
『私も…みんなを、守りたい』
私の行動とその後の小さな声に、なかむは空色の瞳を見開いて、耳を真っ赤に染め上げた。
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黒灰白有無%(プロフ) - 完結おめでとうございます!夢主ちゃんも最強w最強同士、可愛い同士お幸せに〜、溺愛具合も好きです笑、本当に大好きな作品、作者様なので最後まで見れて嬉しいです‼︎本当にお疲れ様でした〜! (2023年1月22日 2時) (レス) @page47 id: 00e0ebd256 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 勘違いして辿々しい説明をする流れがとても好き…!!もちろん今までのお話も大好きです! (2023年1月9日 16時) (レス) @page41 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
詩舞(プロフ) - 初コメ失礼します!スパイから見させてもらってました!文才ありすぎて尊敬します!今はリクエストありませんが、もしあったらその時またお願いします🙂 (2023年1月6日 17時) (レス) @page36 id: b0ae3107b7 (このIDを非表示/違反報告)
萌木(プロフ) - 関係全くないけど話選ぶとこでタイトルの下にアニメイトの広告出てきて且つそこにあった画像が文藝白尾だったっていうね...。 (2023年1月6日 10時) (レス) @page36 id: e13a9a1264 (このIDを非表示/違反報告)
らむね☆(プロフ) - 葡萄ゼリーさん» 覚えてますよ〜🤗スパイが完結したときにコメントくださってましたよね!番外編集の方にリクエストのお話を書いてきたので、ぜひ! (2023年1月5日 11時) (レス) id: d37cd4c15f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らむね☆ | 作成日時:2022年11月19日 16時