わがまま ページ20
「てかさぁーAー」
「んー？」
センラくんはいじっていたスマホを机に置くと、ソファーの端に据わっていた私の隣まで来て、体をピッタリとくっつけた。
…………かわいいな………かわいすぎるな………………
溢れでる愛おしさを制御しつつも、平常心を保ち顔を向ける。
「折り入って相談があるんやけどもね」
「ほう」
「俺らさぁ、付き合ってもう3年やん？」
「うん」
「そろそろ同棲せーへん？」
「むり」
真顔で即答すると、分かりやすくダメージを受けるセンラくん。そもそも同棲の話は今日に始まったことではなかった。それでもこうして別々で暮らしていることにも理由はちゃんとある。
「同棲したらセンラくん絶対炎上するよ」
「ぅ゙っ………」
どこまでもハイスペでスパダリで優しいセンラくんでも、同棲なんてしてしまえばいつか必ず絶対ボロが出る。その時、1番困るのはセンラくんであって、私じゃない。そうなれば、私達の関係が終わってしまうことは疎か、センラくんの今後の活動にも影響が出てしまうことはほぼ確実だ。
そんなリスクを背負ってまで私はセンラくんと一緒に暮らしたいなんて思えない。
「センラくん。前も言ったよね。この話に“絶対”だとか“守る”とかそーゆーのは通用しないの。私はこの先もおばあちゃんになっても、センラくんとずっと一緒に居たいから、わざわざ茨の道を進もうなんて思えない。安定を取ってずっと一緒に居たい。」
「………せやけど」
「センラくん。私も出来ることなら一緒に暮らしたいよ。でもさ、私センラくんの迷惑だけば絶対かけたくないんだ。ましてや“浦島坂田船”の“歌い手センラ”は私のものじゃないし。私のセンラくんは“私生活内の一般人”の時だけ。踏み入っちゃダメなの。」
「………」
ここまで説明すればセンラくんも諦めてくれるだろう。センラくんも馬鹿じゃないし。
しかし、センラくんの表情は私の思っていたものとはかけ離れたもので、何かを閃いたのか、その目にはハイライトが入ってキラッキラに光っていた。
「せ、センラくん？」
「分かった！分かったで！！」
「はぁ？」
「おんなじマンションに住めばええんや！！！！」
「はぁ？」
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作者名：カエデ | 作成日時：2023年9月17日 9時
