19:優しさ ページ21
.
あまりにも自己中心的で横暴な返答が帰ってきたしのぶは数秒固まった。
確かに、そうなのだろう。鬼の始祖を兄に持ち千年以上生き続ける彼女なら自分の姉など生きているうちの知り合いの一人に過ぎない。
人間の、しかも敵である鬼殺隊員に過ぎない。
だがそれでも、こちらからしてみれば唯一の肉親なのだ。
「あなたに、人の心というのは理解できますか?」
『できない。だって私は鬼だから』
「そう、ですか...そうですよね」
何を言ってるんだろう私は。鬼である彼女に何を求めているだろう
『少なくとも、今のあなたはちゃんと自分の気持ちさらけ出せてるんじゃない?』
「.........はい?」
『え、気づいてないの?
────泣いてるじゃん、大粒の涙流してさ』
「え......?」
自分の頬を触れば確かに濡れていた。相当な量の涙が流れた証拠である。
次に床を見れば涙の跡が染みついていた。
気づかなかった...怒りに夢中で、姉さんのことに夢中で......
『まぁ私はおにー様しかいないから姉妹のことはよく分かんないけどさ。幸せなんじゃない?カナエちゃん。自分のことでこんなに泣いてくれるかわいい妹がいるんだから』
笑いながらそう言う彼女は悪戯が成功したような小さな子供のような顔をしていて
「......あなた...Aさんはどっちの...
いいえ、なんでもないです。貴重な姉の話をありがとうございました。それに見苦しい姿をお見せしてしまい申し訳ありません」
『あ、私そうゆう堅苦しいの大っ嫌いだからやめて。ねぇ〜あの美味しい毒もっと頂戴?"しのぶちゃん"』
「...ふふふ、そんなに欲しいなら実験台になってくださいよ、"Aさん"」
『え〜どうしよっかなぁ〜〜?』
ありがとう、Aさん
とっても不器用で、優しい
でもきっとあなたはそれが"
.
235人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まり。 | 作成日時:2020年4月26日 22時