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時は平安
一人の男が貴族として生を受けた。その男は生まれつき体が弱く何をするにも人の助けが必要だった。
父にも母にも愛されず、男は孤独だった。どんな医者も彼の病を治すことは出来ず男は"二十歳になる前に死ぬ"と言われていた。
のちに子ができにくい母にまた新たな命が宿った。
産まれた子は女子で体は健康そのものであり、父と母は大いに喜んだ。
しかし、その赤子は盲目だった。
大きな瞳は誰かを映すことなく閉ざされた。
彼女もまた人の助けがなければ何一つまともにできなかった。
父と母は子供に関心をなくし、病を持つ子供達を煩わしく思うようになった。
だが男は妹を愛した。妹も、兄を愛した。
『にいさま、お空は きれい?』
「そうだな 今日は天気がいい」
兄には妹が。妹には兄が。何よりも大切な存在だった。
時は経ち、男はみるみる衰弱していったがある日、男の元に数々の病を治してきたという腕のいい医者が現れた。
が、数年経っても男の病は治ることはなく病状は悪化した。
いつまでたっても治ることのない病と量の増え続ける薬に男は限界を迎えた。
「もうよい。これ以上は無意味だ。私はもうすぐ死ぬ」
湧き上がる怒りに任せ、そばに置いてあった刃物を医者の後頭部に叩きつけた。
医者を殺してからまもなくして、体に異変が起きた。細かった腕も重かった足も呼吸の困難な体から強靭な肉体へと変化した。
「嗚呼、これで私は自由だ」
『兄様、遠くへ行ってしまうの?』
目に包帯を巻かれた妹が襖に寄りかかって問いだした。
男は得た肉体で妹を抱き上げて自由を見せてやる、と言った。
無惨が初めて鬼にした彼女は、"色"を知った。
白 黒 灰の三色の色を
『兄様、私に世界を見せてくれてありがとう』
「違う、私が見せたかったのはそんな世界じゃない」
何故か。理由は誰にも分からない。
彼女の目は治らなかった。否、色覚異常を患った。
天罰か。それとも運命か。
この選択肢を選んだのは間違いだったのか。
「A、お前には"呪い"をかけない。好きなように私を呼び、好きなように世界を視てほしい」
『え、ほんと?私自由〜〜!』
彼女には
『きゃ〜!おもしろ〜い!!』
『えー汚いから殺しちゃった』
『私、馬鹿は嫌いなの』
もしかしたら自由を与えすぎたのかもしれない。
『にぃに!だあいすき!!』
「許すッ!!!」
お転婆な悪戯っ子になりました
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作者名:まり。 | 作成日時:2020年4月26日 22時